忍者ブログ
  • 2026.03
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 2026.05
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2026/04/05 17:39 】 |
井上×木戸
なんかそれらしい前フリを用意しようと思ってさっきから書いては消ししているのですけれど、
酔っ払っているせいでどうもうまくまいりません。
とりあえず久保田旨いですよねカンパーイ。
ごきげんなのでベッドの支柱(パイプベッドなのです)に
ポスカで「こごしょのろうか」と書いてみました。
ひろみの命と書きました、みたいなね。何人わかるんだろうねこの(「ひろみの……」)ネタ。
とりあえず今夜はよくわかんないけどぐっすり眠れそうです。前フリ?もういいやそんなの。

今宵も呑んだくれの妄想におつきあい下さる皆様、ありがとうございます。
どうしてそんなに優しいんですかっていうか久保田飲みますか千寿でいいですか?

酔っ払いはこれから「こごしょのろうか」で眠ります。
なんかよくわかんないよみものを以下に上げておきます。
武子さん初登場ですが、だからどうしたというレベルで相変わらずアレです。


『孤閨の朝』

 どうして、体が動かないのだろう。
 声すら出せない。
 目を閉じるか、せめて逸らしたいのに、眼球がその光景に射抜かれたように動かない。
 つめたい汗が背を伝う。
 (真っ暗だ)
 と思った。
 自分のいる場所は真の暗闇だった。それなのにわずかに三尺ほどの距離にいる二人のまわりは、灯も入れないのに煌々と明るい。
 木戸の額に乱れかかった髪のひとすじまで見えた。
 
 「はっ……あ、あぁ……」
 
 呻き声のひとつさえ洩らせない自分をよそに、木戸は悩ましげに身をよじり、高い声で喘いでいた。大きく拡げた両脚を、膝頭が肩につきそうなほど折り曲げられて、それは苦しい姿勢であるはずなのに。
 「あ、大久保、さん……」
 木戸の声は深い悦びを訴えていた。
 大久保は無言だったが、彼の息も相当に荒い。木戸の嬌声よりなお聞きたくないその息遣いも、まるで耳許で聞かされているように、はっきりと響いた。
 (なぜ)
 井上の頭は混乱の中をめまぐるしく駆けて、その疑問に逢着すると、そこではたと活動をやめた。――わからないのだ、何もかも。
 そもそも、ここはどこだったろうか。
 よく使う料理屋の二階だったような気がするのだが、今自分のまわりにひろがっている空間はいかにも茫々として、果てがなく思えた。あの低い天井や、煤けた色の床柱はどこに消えたのだろうか。目の前でまぐわっている二人も、白い背景の中にぼうっと浮かんでいるように見えた。
 (何なんだ……)
 胃から灼けるように酸いものがこみあげてくる。木戸が時折大久保と寝ていることは知っていた。それを咎めたことも、咎めようと思ったこともない。もともと井上と木戸にしたところで、もののはずみで――少なくとも木戸はそう思っているだろう――はじまったような関係だった。木戸に貞節をもとめる筋合のつながりではない。それに、大久保と寝ることは、木戸にとっておそらく必要なことなのだろうと、うまくそこは理屈では説明できないながら、なんとなく木戸の様子で察している。
 が、実際に抱き合っているさまを見て快いかといえば、それは無論別の問題である。
 (なぜ)
 と、答えがあたえられないのを承知で、しかしどうしようもなくまたその疑問につきあたる。なぜ二人が交合しているか、ではない。なぜ自分がこの場にいるのか――否、なぜ大久保がここにいるのか、井上にはどうしてもわからない。
 そもそもは、さっきまで自分が木戸を抱きつつあったのではなかったか。
 
 木戸の体を床に倒し、衣服を剥いだのは井上だった。木戸の腕はやわらかく首に巻きつき、そっと寄せられた唇に、口づけをねだられた。深く重ねて、彼の舌を甘噛みし、わざと舌の音を立てる。両耳を塞いでやると、頭の中で響く淫らな音に、彼は身を顫わせて耐えた。そうしておいて、片手を両脚の間にしのばせ、ゆっくりとそこを馴らしてやる。
 「ん……っ」
 濡れた声が洩れ、木戸の中が焦れるように動く。もう入ってしまおうかと思ったとき、耳朶を口に含みながら、木戸が囁いた。
 「ちょっと目をつぶってろ」
 井上はまばたきして木戸を見つめた。自分が木戸に「目をとじるな」と言ったことはあるが、あべこべにこちらが、しかも閉じていろとはどういうことなのだろう。何かの遊びだろうか。
 (それで――そう、)
 あのときも、自分は言ったのだった。
 「なぜ」
と。
木戸は答えず、
「いいから」
と多少むずかりつつ微笑んだ。何をする気なのか不審ではあり、そしてそんなことよりも井上は早く繋がりたかったのだが、とりあえず言われたとおりに目を閉じた。
「これでいいのか?」
と言ったように思う。
 
――――そうして。
 
「もういいよ」
という声が聞こえたのではなかったか。
目を閉じている間がどのくらいの時間だったのか、何がしかの物音や気配があったのか、そのあたりの記憶は霞がかかったように、ひどくおぼろげになっている。否、むしろあの間、自分には意識がなかったのではないか。
不意に、まどろみから目覚めるように、遠くに木戸の声を聞いた。
かくれ鬼をしている子供のような、わずかに節のついたその声。
それで、自分は目をあけた。いわれた言葉の意味を理解して、意志をもったうえでそうしたというよりも、まるでふらふらと操られるように。
目をあけると、その光景があった。息をするのすら忘れそうだった。
(いつ……)
(どこから……)
そしてなぜ、大久保はここへ来て、目の前で木戸を抱いているのだろうか。自分はなぜ腕に抱いていたはずの木戸の体を離れて、ここでこうして阿呆のように二人の痴態を眺めているのだろう。
「あ……」
木戸の背がしなる。汗に濡れた素肌を晒している彼とは対照的に、大久保は洋装の前をくつろげて、押し入った部分だけで木戸と繋がっている。そうして脚を押さえていた手を離し、今度は腰の下から廻して抱え上げるようにして、ぐいと自分の体へ引き寄せた。
「ああ……っ」
衝撃に木戸が悲鳴を上げる。が、その両手は大久保を離すまいとするように、固く彼の背にしがみついていた。
「……っん、あ、」
深くきつく、大久保が腰を使う。
(あんなにしたら痛いだろうに)
肉の搏ちあう音が響き、木戸の体が浄瑠璃かなにかで使う、関節のついた人形のようにがくがくと揺れている。自分も閨では強引なほうだが、あんなふうには抱かない。
(壊れないのか)
と不安に思う。大柄で肉の堅い木戸の体でも、そこばかりは別である。ひどく熱くて敏感なあの場所を、ああしてがむしゃらに責め立てる大胆さは自分にはない。
しかも。
(俺とのときはあんな顔は見ないな)
かなり乱暴にされているはずの木戸は、それでもまるで抗うようすもなく、むしろ大久保のその扱いを悦ぶように、高く声をあげて揺さぶられている。その顔が、いかにも切なげに、湿り気を帯びていた。縋るように、許しを乞うように、そして何かを捧げるように。
いまいましくも悲しくも――自分よりもなお木戸のために――思いながら、しかし初めて見る他者との、それも一面において仇敵であるはずの男との木戸の痴態は、井上を激しく昂ぶらせた。激しく貫く大久保を包み込んでいるのは、木戸の体中でもっとも淫蕩で熱く熟れきった部分の肉である。刺激をうけるたびに、そこは独立した生き物のように蠢いているだろう。快楽の密を搾り取ろうと貪欲に吸いつき、締めあげているにちがいない。思うまいとしても井上の意識は過去の木戸との情事をめまぐるしく反芻し、さらに目の前の光景にそれを映し見てしまう。今頃ほんとうは木戸の中をあじわっていたはずの部分に血があつまり、硬く張りつめた。
「……っ、」
痛いほどの昂奮は生理的にも苦痛でしかなく、木戸に触れるのは無理でも、せめて自分で慰めて放出したいと思うのだが、井上の体はやはり指一本動かない。変な汗が額に滲みはじめたとき、
(……あ)
大久保に突き上げられている木戸と目があった。
はあはあと内臓の熱までも伝わりそうな呼吸を繰り返しながら、木戸は首だけをこちらにむけ、目をほそめてゆっくりと舌なめずりをした。
『聞多……』
声は出さず、唇の動きだけで呼びかけてくる。ぞくぞくと悪寒に似た痺れが背筋をかけ上がった。
井上の反応をたしかめると、木戸は大久保に向き直った。白い手が大久保の頬を撫でる。それが合図であるかのように、大久保は動きをゆるめ、木戸の口許へ顔を寄せた。その耳へ木戸が何事かをささやく。
と。
(――――――)
大久保がこちらを見た。いつもは能面のようなその顔に、かすかな――しかし鋭い笑いがうかんでいる。もう一度木戸が頬にふれて、大久保がその手をとって指先を口にふくんだ。大久保もまた視線を木戸に戻す。
「ぅん……、」
木戸の唇から寂しそうな声が洩れた。大久保が、木戸の中から引き抜いたのだった。そうしておいて、木戸の背に手をまわして抱き起こす。大久保も胡座をくずしたような格好で座り、木戸に口づけながら、その腕をとって導いた。
木戸と繋がっているときは見えなかったが、いまこちらに正面を向けて座っている大久保のそこが、井上の目にははっきりと映った。
(ご立派なお道具じゃねえか)
苦笑したいような、歯ぎしりしたいような、何ともいえない気持である。その大久保を、木戸の指がかるく爪弾く。大久保はわずかに眉をひそめたようだった。それから木戸はもう一度、今度は挑むような目でこちらをふりかえった。そのまま目をそらさずに、大久保に背をむけて、その膝の上に跨る。片腕を大久保の肩にまわし、もう一方の手をいとおしそうにそこに添えて、さっきまで彼をくわえこんでいた部分にあてがいながら、ゆっくりと腰を落としてゆく。
「んぁ、あ、あ……っ」
背をしならせ、紅い舌をのぞかせて、盈たされてゆく悦びを体全体で表現する。潤んだ眼が、吸いつくように井上をとらえていた。
「はぁ……、」
木戸は自分で片脚を抱え上げ、繋がった部分をわざと井上に見せつける。いやらしく充血した肉の裂け目が、ぎちぎちといっぱいに大久保を頬張っている。どちらの愉悦の滴ったあとなのか、ぬらぬらと濡れて光って。
その腰を支え、首筋に歯を立てながら、大久保もまた井上を見つめている。なにかを暴くような、冷たいその目。日頃から井上は大久保の目つきが好きではなかったが、しかしその目の持ち主に木戸が犯されていると思うと、変に体が疼いた。
「全部、入……、」
井上と目をあわせたまま、首だけをすこしうしろに傾けて木戸が問う。
「ええ、入りましたよ」
はじめて大久保が口をきいた。それは井上がはじめて聞く、ひどくやさしい、しかし胸の凍えるような声だった。
大久保の手が木戸の手を結合部に導く。ふるえる指で、根本まで埋まっているのを確認すると、
「ああ、嬉しい……」
木戸が溜息を洩らした。大久保の大きさと角度がたまらないのだろう。彼のものも天を仰いで反りかえっている。快感に耐えながら、切れ切れにこぼす息の甘さを鼻先で嗅ぐような気が、井上にはした。
(畜生……)
木戸は井上を嬲るように、わざと淫らな視線を送ってくる。ときどきあからさまに股間を眺めている。体さえ動けば、とびかかって大久保を打ちのめし、木戸を縛りあげてめちゃくちゃに犯してやりたい。それこそ大久保がさっきしていたように、強引に、激しく……――。
「動いて、くださ……」
井上に笑いかけたまま、木戸は大久保にねだる。
大久保は後ろから木戸の顔をのぞきこんで、ちょっと考えるようすだったが、やがて肩から木戸の腕をはずすと、かるく彼の背中を押した。木戸は心得たように立てていた脚を下ろし、そろそろと前屈みになった。その動きにあわせて、大久保も繋がった腰を中心に姿勢をずらす。やがて木戸が前面の床に腕と胸をつけ、大久保が後ろから、その腰を抱えて犯す形になった。
「んん、」
木戸が鼻を鳴らすと、大久保が動きはじめた。腰を高く上げさせているせいで、大久保が出入りしている様子が井上からも見える。濡れた音が、三人のいる得体の知れない空間に響いていた。
木戸は首を正面に保っている力ももはやないらしく、自分の腕に傾けた半面を埋めて、だらしなく唾液をこぼしながら啼いていた。それでも、眼だけはあいかわらずこちらを向いて、昂奮と憤りと嘆きとを内に滾らせたまま、虚しく凍りついた井上を見つめている。
「あぁ、いい……」
口角が淫猥な笑みを刻む。
「あ、あ、大久保さん、」
次第に余裕のない動きになる大久保に、
「そ、ろそろ……?」
限界がちかいのかと問う。大久保の返事はなかったが、木戸は陶然として、
「私も」
いきそうです、とねっとりとした口調で訴えた。
「一緒が、いいです。一緒にいってくださいね」
大久保はやはり答えず、木戸の腰をきつく掴んで、激しく突き上げつづけている。食いしばった歯の隙間を洩れる息が、ひどく乱れている。
「ね、大久保さん……」
木戸の言葉はだんだんと舌たらずに、声にも芯がなく、譫言のようになる。それが、井上にはひどく甘く聞こえた。
「そ、こ……もう、いい…………い、あ」
「まだです」
大久保の低い声がした。
「や、無理です、大久保さ、」
木戸の声が慄える。その間も、彼は揺さぶられたままである。大久保の手が、前に伸びている。木戸のそこを握り込んで、吐精を抑えているらしい。
「一緒がよろしいのでしょう」
「そんな…………、」
木戸は顔をゆがめ、紅潮した頬に涙を溢れさせた。まるで井上に助けをもとめるように、唇をわななかせながら……――。
「苦し……っ、」
「もうすぐですよ」
前を抑えたまま大久保は腰を振り、そうして奥を突かれるごとに木戸は甘く切なげに啼いた。かれらは汗みずくで交わっていたが、井上もまた、全身を汗に濡らしていた。瞼ひとつ自分の意志で動かせない状況では自分の体は見えはしないが、おそらく汗だったろう。汗でなければ、いっそ血だったかもしれない。
体じゅうが熱く、眩暈がした。
大久保が短く詰めた息を洩らし、捩じ込むように木戸を貫いて、そのまま覆い被さった。同時に、木戸を縛めていた手を離したのだろう、
「大久保さん――――――」
悲鳴に似た声を上げて木戸がふるえ、夜の湖水のように黒く揺れるその瞳の中に、自分の姿が歪んで映るのを、井上ははっきりと見た。
やがて木戸がくずおれると同時に自分の体の力が抜け、その思いがけない軽さに「ああ、動かせるぞ」と直感したその瞬間、井上は大きく四肢を突き出した。今まで鉛のように重く自分を縛っていたあたりの空気を両手足で思いきり引き裂いて、彼は久々に得た自由の天地へおどり出た。
 
「――――あ?」
 
四肢が空気を裂くなどということがあるだろうか。
彼はそのとき、片脚で布団を大きく跳ね上げて、さらに片手で枕を部屋の隅へ飛ばし、自由の天地ならぬ六尺の布団の上に眼をさました。見慣れた家の天井が、頭の上にひろがっている。
「ああ!?」
大きく叫んで飛び起きた。
(今の……今の……?)
その額が汗で湿っている。額だけではない、胸も背中も、ぐっしょりと汗で濡れていた。おまけに……――
「お目覚めですか?」
障子の向こうに妻の声がして、井上はあわてて掛布団を引き寄せた。
「お、おうっ」
縁に面した障子がすらりと開いて、もう中天に上った陽の光を背に、妻が顔を出す。
「ぐっすり眠っておいででしたから、お声をかけなかったのですけれど……。さっき婆やに廊下の掃除をさせておりましたら、旦那様のお部屋からうなされている声がしたって。どうかなさいましたの?」
「おおおおう、そ、そうか?」
ただそれだけの応答をするだけで、舌を噛みそうになった。間一髪で手繰り寄せた布団を腹の上まで引き上げて、しっかりと握っている。その掌にまた新たな汗が滲む。
妻は美しい眉を心配そうによせて、畳をにじり寄ってきた。
「まあ、汗」
お加減でもお悪いんですの、と訊かれたのであわてて首を横に振った。
「お身体拭いてさしあげましょうか。お風邪を召すといけませんから」
肩にふれようとしたので、今度はさらに激しく首を振る。
「いい、いや、や、いいんだ、大丈夫だ。い今、考えごと、考えごとをしてるんだ。考えごと」
「考えごと?」
「そうだ考えごとだ。これはもう、大変な、あのー何だ、国家のあれ、安危に関わる重要な思案だ」
「寝てらしたんじゃないんですの?」
「床に入ってたからって寝てるときめつけるやつがあるか。昔からほれ、馬上、厠上、枕上といってだな、」
「そんな大汗かくほどお悩みにならなくっても……」
「国家の大事だからな、汗も出ようというもので、あの、いいからお前はあっちに行ってなさい」
ようやくのことで妻を追い出すと、井上は天井を仰いで長歎息した。
(畜生……)
どうすんだこれ、と口のうちでつぶやきながら布団をめくる。汗は、まあいい。しかし、
(元服したてのガキか俺は……)
寝巻の裾を割って手をあててみると、内股がどろりとしたものに濡れている。むっと、生ぐさいにおいが鼻先へのぼってきた。指の間に糸を引くそれを眺めて、井上は顔をしかめた。
こんなことは、長く経験していなかった。若い時分だって、これほど派手にやらかしたことはそうなかっただろう。
障子のむこうに気配がないのをもう一度たしかめて、手早く下帯を解くと、ついでに手についたものもなすりつけて、ぐるぐる巻きにまるめてしまった。あとで庭にでも埋めてしまおう。
(あーあ……)
障子から、欄間から、ほろほろとこぼれてくる小春日のしろい陽射しに照らされて、井上は深くうなだれた。
(今日で何日目だっけな)
横浜港にその盛大な一行を見送った日のことを思いやった。あれから、二十日ほどにもなろうか。そろそろアメリカに着く頃かもしれない。
二十日やそこらなら、これまでにも会わないことはあった。互いに暇な身体ではない。しかし今回の木戸の――正確には木戸も加わった洋行は、最低でも半年を見積もっている。海濤万里を隔てての半年である。ずいぶん、長い。
(もういっぺんぐらいは大久保に突っこませたかな)
もちろん、それをどうこう言える間柄の自分たちではないのだが。
「くっそ……」
舌打ちすると、髪が互いに絡んで鳥の巣をつくるほど、乱暴に頭を掻いた。あと何夜、この鬱屈に悶え、何度おなじ妄念にとらわれねばならないのだろう。
政務に励めば励んだで、岩倉以下の能才が抜けた今の政府がいかにも不安におもえていたたまれず、かといってたまに非番の朝寝を楽しもうとすれば、こんな目に遭う。我ながら女々しいと思うのだが、政治むきのことはともかく、男としての生理反応ばかりはどうにもならない。
「帰ってきたら、」
と思わず口に出してつぶやいて、あわてて唇を噛む。片手で顎のあたりを撫でさすりながら、天井を睨まえた。
(泣いて気絶するまで犯してやる)
勝手に決めこんだはいいが、そうして思いきめてみると、またぞろひとりでに、脳裡に木戸のあらぬ姿が浮かぶ。さっき眠ったまま弾けた部分にふたたび血があつまってきて、井上は閉口した。ふとさっき追い出した妻の顔を思いうかべたが、
(昼間っからやらしちゃくんねえか……)
挙措の美しい、おとなしやかな女だが、芯の部分に礼にかなった清楚な頑固さがあって、それだけに淫売婦まがいのはしたない真似は、夫といえども許してくれない。
(しゃあねえ、便所でも行って抜くか……)
井上は死際の老人の呻吟に似た溜息をひとつつくと、ふらふらとさびしく立ち上がった。
庭木が朽ち葉を落とす気配に、木戸の声を聞いたような気がした。東京の空は、今日もかわいて寒かった。

拍手[27回]

PR
【2012/04/11 23:51 】 | よみもの
<<前ページ | ホーム | 次ページ>>