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【2026/04/05 00:24 】 |
大久保×木戸
お待たせいたしました。

リクエストいただいておりました大木戸です。
今日も愛のない2人です。
愛じゃないんだけどよくわからない何かで結ばれている2人です。

まあ普通に性欲ですよね。

M様こんなもんでおゆるしいただけますでしょうか。
せっかく髭完成後の大久保さんなんだから
髭を使ってナニかすればよかった、とは書き了えてから思いました。
今度やろうフヒヒww
リクエストありがとうございました。


以下、よみものでございます。

『無縁の隣人』
 「お気が進みませんか」
 彼のために襖を開けて奥の間を指ししめしながら、そうまでされてなお立ち上がろうともしない大久保をふりかえって、木戸は婉然と笑った。しどけなく肩に引っかけた綿入が、背をすべって畳の上へ落ちる。長火鉢の火はあかあかと熾っていて、寒くはなかった。
 「大久保さん」
 呼びかけると、大久保は洋装の膝を正しく折ったまま、ちょっと眉をあげるだけでそれに応えてみせた。その下の落ち窪んだ瞳には、奥の間に敷いた布団が見えているはずである。
 木戸はあいかわらず表情のゆらぎを消して微笑み、大久保は黙って見つめかえしていたが、やがて、
 「お体は――」
 ぼそりと口にした。
 「その後、いかがです」
 木戸はさもうれしそうに目をほそめて、
 「おかげさまで、ひところよりはずいぶん楽になりました」
 と答えた。内心、馬鹿馬鹿しいと思っている。寝起きもままならないような不調のさなか、しきりに復官せよといってよこしたのはほかならぬ大久保ではないか。
 しかし、だからこそ。
 今このときこうして自分が誘えば、断りようのない彼なのだと知っている。
 (俺が戻るよりほかないんだものな)
 自惚れではなく、むしろひどく気ぶっせいな実感として木戸はそう思っている。
 足掛け二年に及んだ外遊からの帰朝以来、一時は政府が瓦解するかとおもわれたほどの紛擾を経て、大久保はどうにかその勝利者の位置に座ることを得た。しかしそれは、彼自身面白くもないであろう、実に殆い辛勝であった。
 何より大久保にとって痛手であったのは、刎頸の友である西郷が談判破裂の後、官を抛って帰郷してしまったことであろう。彼に傾倒する朋党の人びとも陸続と東京を去っていった。大久保はさすがにそれについて感傷めいた表情をみせなかったが、よそ目に見るだけでも彼のよって立つ基盤が――純粋の政治勢力としてはともかく、もっと微妙な、無形のちからとして――殺風景なものになったことはたしかである。彼の盟友といえば岩倉がいるが、今度の一件に関して、岩倉には西郷に詰め寄られて一旦征韓の議決を下した前科がある。
 「岩公らしからぬお振舞ですな」
 見舞がてら報告(と大久保は言ったが、実際はその逆であったろう)にやって来た大久保に、木戸は首をひねりながらそう言ったものである。
 「なにか御心算がおありでそのような挙に出られたのでしょうか」
 とは、べつに皮肉ではない。木戸は元来あまり岩倉を好かなかったが、彼の巧智と謀才にはつねづね感心していた。今度もなにか、肚づもりするところがあって一旦議決という曲芸を演じたものかと思ったのである。
 ところが大久保は、さっと筆でひと刷きしたような形のよい眉をこころもち曇らせて、
 「何も御深謀などはおもちではありますまい」
 と答えた。要するに、西郷の剣幕に圧(お)されてしっ腰なく裁可を下してしまっただけのことだというのである。
 「西郷は条公、岩公お二方と刺し違えかねないようすでしたので……そこはまがりなりにも弓馬の家に育った我々とは、対応もちがっておいででしょう」
 それが三百年幕府に飼い慣らされた公家根性だ、とまでは大久保はいわなかったが。
 早い話が岩倉は密室で策謀をめぐらすのが能事ではあるものの、血風の巷に出でて大立ち回りをするという柄ではないのだろう。それでも無論大久保はなお岩倉に期待するところ大であろうし、それは木戸も変わらないのだが、ただ、必ずしも岩倉を先頭に立ててはさばききれない局面のあることを、大久保は今度の一件で知ったようであった。
 そして、一点染みのように印された不安は、岩倉が肝のふといところを見せて西郷相手に一歩も退かず、ついにかれら征韓派参議の辞官というかたちで一応の勝利をえたのちも、薄黒く大久保の心にとどまっているらしい。
 彼は、木戸を欲した。
 「両公より私のほうがよほど軟弱ですがね」
 今夏の馬車の事故以来、ひどい頭痛と痺れをわずらって、家の中を歩くのがやっとだった木戸を、大久保はしつこく訪ねては復帰を懇請した。
 「すぐにふてくされて引っ込むだとか、議論が女のようだとか、まあ私が出るのは面白くない人が多いんでしょうから、あなたも余計な苦労の種を背負いこむことになりますよ」
 「そういう愚物は、いやなら自分が辞めればいいのです」
 あなたが事に当たってはどれほど猛であられるか私は存じていますと、聞いている木戸が気恥ずかしくなるほど熱のこもった弁を大久保はふるった。そのいちいちを木戸は神妙な顔をして聞いていたが、感心したのは彼が意外に能弁だということではなく、その目指すところのぶれのなさであった。
 彼はそれが彼自身の政見・政略上要請されることならば、平気で木戸に追従ものべるし、またその表向きの熱弁が、実際は単に戦略上のものでしかないことを木戸に見透かされても、すこしも臆しないのだった。木戸はわざわざ大久保の見えすいたおべんちゃらを聞かされるのはいやだったが、ただ、そのおべんちゃらに見せかけたことばの内実にある峻厳さは、わりあいにこころよく思っていた。今度の復帰要請にしたところで、
 (死ぬなら廟堂で死ねというのか)
 修辞をはぎとってしまえばつまりはそう解釈するほかないであろう。大久保はおそらく木戸がそう考えるのをわかっていて、その安っぽい称讃と懇望のことばを木戸の前に叩きつけている。そういうふてぶてしさと目的へのこだわりには、毎度辟易しつつも決して憎くはない。
 それに。
 (そもそも、いわれるまでもない)
 と、今度の件に関しては木戸はすでにそう観じきってしまっている。瓦解は免れたものの、未だ政府に動揺がつづいているこのとき、木戸が出ねばならないというのは道理であろう。木戸は自分の能力を大久保があれこれ持ち上げるほどには買いかぶっていなかったが、一応自分の名が――たとえ空名でも――それなりの効力をもっている上は、反対派に対する重石として、とにかくもいるだけはいなければならないだろう。
 だから、体さえ癒ればふたたび出るつもりで――出たくはないのだが、そうしなければおさまるまいと思っていた。それでとうとう暮れも押し詰まった近頃、来年からの出仕を内諾したのである。
 「条件については、あなたのほうでもうすこし色をつけてくださいませんか」
 意味ありげにそう囁くのも、もうこれで何度目かのお定まりであった。
 
 果たして、大久保はやって来た。
 もう概ね木戸の役職についての下相談も済んで、あとは万事出仕後に相談することともなれば、今この時期にあらためて話すことは特にない。そういうときにこれといった用事もつくらずただ会いたいというのなら、それは寝たいというなぞである。木戸はいつでも大久保を誘うときはそうしてきたし、大久保も充分にそれをわかっているはずである。
 が、わかっていて招かれるまま木戸の前にあらわれたはずの大久保は、しかしその晩にかぎって容易に腰をあげようとはしなかった。
 「どうかなさいましたか」
 奥の間にとった床を指ししめしたまま、木戸はじれったいのをこらえておだやかに尋ねた。
 「私がおきらいですか」
 舌の動く音が聞こえるほど、湿っぽく囁く。大久保はそうではないという意味のことを口重く答えた。
(俺を抱くのは業腹だろうな)
そう思うことに、うすぐらいよろこびがある。あまり認めたくはないことだが、いま大久保を誘うについては、何ほどかの復讐の意味合いが、どうしても滲まずにはいない。
(あの男が去って俺が残るなど)
皮肉だ、と木戸は思っている。大久保もおそらく――木戸以上にそう思っているだろう。
西郷は去った。大久保は彼を追わなかった。当然であろう。が、それを、
(たいそうなことのようにいうじゃないか)
と、木戸は誰にもいわなかったが、内心苦々しい思いで眺めている。
世間のさわぎを、である。
曰く、大久保は親友西郷さえ弊履のように棄て去った冷血の男である。曰く、否々あれは国家の大事を重んじた断腸の勇断である。曰く、政争とはかくも非情のものである。云々。
大久保はそれらの喧噪を聞こえぬふりですましているが、しかし近頃の彼の面差しにはどこかしら悲壮の色があって、世間がいうのと同様の感慨が彼にもひそかにあるらしいことは、彼の近くで接している人間の皆察しているところであった。
それを、
(あの大久保にして、いまさら)
と木戸は思うのである。
国事の前にはときに旧交が躙みにじられねばならないことも、為政者に情実がゆるされぬことも、皆あたりまえの話ではないか。西郷は去った。彼の一党の動向は不穏で、もし万々一のことがあるならば、政府はこれを討たねばならない。しかし、それが何だといってかれらはこれみよがしの憂い顔をしているのか。
(畢竟、僥倖で維新にありついた者の甘えだ)
つきつめて考えれば、木戸の思いはそこへいたらざるをえない。
あの幕末の数年間、また御一新を経てのちも、互いの大義を主張して骨肉が相喰むなど、長州ではとりたてていうにもたらぬほどの日常事であった。薩摩でもその種の流血沙汰がなかったわけではないが、木戸の主観でいえばかれらは血よりも権謀をもって維新の収果を手にした者たちである。薩摩が流さねばならぬはずだった血のかわりに、かれらに謀られた他藩や草莽の士が傷を負ってきた。
(だから、いまさら軽傷にも飛びあがってみせるのだろう)
内訌の憂いを知らずに今日まできた薩摩は、そのめずらしさに沸きたち、思わざる痛みに愕いているのだろう。木戸にいわせれば、苦労知らずの若旦那が親父に勘当されてはじめて銭のありがたみを味わったようなもので、いちいち同情するにもあたらない。それどころか、その歎きように今までの放蕩ぶりがきわだって、かえって腹立たしいくらいである。
(馬鹿馬鹿しい)
大久保の髭がなにやら潮垂れてみえるのも、木戸の嘲笑(無論肚のなかでのことだが)をさそった。それでも彼は動じていないふりを装い、彼自身をもそうして瞞着してしまうつもりだったのだろうが。
(させるか――)
木戸を動かしたのは、あるいはそういうさもしい底意地のわるさだったか、どうか。
 
大久保とは情人としてもすでに浅いつきあいではないが、彼から木戸を誘ったことは一度もなかった。木戸が愛欲で抱かれるのではないように、大久保にしたところで、すすんで木戸を抱きたくはないであろう。ただ誘われるままにしなければ、木戸が官をすててしまうことを彼は知っている。だから彼は煽られたふりをして木戸の手をとり、衣を剥ぎ、体を繋げるのだ。
その大久保にとって厄介な強制力は、今回こそ大きいであろう。
西郷は去った。あの巨躯そのままにずっしりとした肚ごたえを彼を知るすべての人にあたえていた男は、その去るにあたってもやはりすくなからぬ衝撃をのこしていった。動揺は今も、むしろ黒い沼の波紋のように次第にひろがりつつある。そういう今このとき、大久保は木戸を手放すわけにはいかないだろう。木戸が寝たいといえば、無下にことわれる彼ではないのだ。
たとえ、肚のうちには西郷と袂別した歎きが劇しくとどろいていても。
「おきらいでないのなら、どうぞ私を犯してください」
(同朋相伐つ日の跫音に肝を凍らせながら)
木戸は香油壺の口に張った皮膜のような笑みをうかべて、大久保の手の甲を撫でた。
 
閨の中での大久保の仕草は、憎らしいほどこまやかであった。すこしは常の彼らしからぬ苛立ちでも感じられるかと思っていた木戸は、
(つくづく可愛げのない男だな)
呆れながら大久保の指の下で身をくねらせた。
丹念に体を慣らしたあとで重なって来ようとした男を、木戸はそっと頬を撫でて制した。わずかに目を見ひらいた顔へ笑いかけてみせてから、
「信じてよろしいですね」
小さく、しかし霜の張りつめたような声でささやいた。
「何をでしょうか」
「あなたは大義を――ものの順逆を見あやまることはなさいますまいね」
両手でかるく彼の頬をはさみ、遁れられないように正面から目をあわせた。大久保は答えず、ゆっくりとまばたきをする。わざと鈍いふりをするときの、それが彼の癖なのだと知っている。
「万々一のことがおこったときは、二度と郷関をくぐらぬお覚悟でおいでかとうかがっているのです」
「万々一のこととは何です」
「私の口からそれをいわせるんですか」
目をほそめてみせながら、いっそこのままこの秀でた頬骨を潰してやろうかと思った。二度と薩摩に帰れぬほどの峻厳な措置を下すということ――それが必要な事態といえば、ひとつしかないではないか。
が。
「何にしましても」
と、わざと(であろう)無感動な声で大久保はいった。
「そういう大事がおこらぬように、微力を尽くすまでです」
「おどろいた」
と木戸が言ったのは本心である。
「あなたにしてはずいぶん甘いことをおっしゃる」
「甘いつもりはありません。これでも身を削って百方苦心する決意でおります」
「その、つもりとか決意とかいうのが失礼ながら甘いというのです。つもり、つもりで叛徒がそれにしたがってくれるなら苦労はありませんよ」
昂まりかけた互いの体の熱は、すでに冷めている。木戸はほとんど夢中で言いつのったが、叛徒、といったとき大久保の窪んだ眼がさすがにきろりと暗く光ったのをみとめて、はっと口を噤んだ。
「――失礼」
ちょっと顔の前へ片手をかざしてから、
「しかしありうべからざる毫末の、さらにわずかな火種まで考えぬいて手を打っておかねば、闔国の経綸はどうにもなりますまい」
我々は祈祷師ではないのです。治平を願うのではなく、血まみれに――泥まみれになってつくらねばなりません。
ですから、と木戸は今度は気おくれを追いやって、射抜くように大久保を見すえた。
「私はもはや萩や山口に墓は建てえぬと肚をきめております。同朋を討ったあのときから、藩国はすでに私を容れない。私も死して帰る場所はあそこではない」
四年前の諸隊の叛乱とその討伐について、木戸はそのように思っている。今後薩摩に乱があれば、そのかみの長州の残党も蹶つであろう。そして、木戸はかならずこれを討つ。とうにその覚悟でいるのだ。だから。
「あなたは御一新以後渾身朝臣であるお覚悟をなさったものとお見受けします。向後何があったとしてもそれは揺るがれぬことと、私は信じてよろしいですね」
たとえ西郷に罪し、彼を討つことになっても、とまではさすがにいわなかったが。
「もとよりです」
と大久保は答えた。それは最上の返答であるはずなのに、なぜか木戸には一点、ちりちりと癇がくすぶる感じがした。
(きいたふうなことをいう)
ゆるやかに目をほそめながら、肚の底に灰色の埋み火を灯しつづける。
(まだ何もわからぬくせに)
かれらのまだ知らぬ憂憤と歎き、痛みがあるのだ。国家後来のことをおもえばかれらがそれを知らずにすめばいいと思う一方、その甘っちょろけたおめでたさに、痛棒を喰らわせてやりたい思いもある。
(ああ、面倒だ)
ひそかに身を絞られるような葛藤を、そう観じて木戸はうつむき、眉根をよせた。大久保などとかかわるかぎり、自分はこの息苦しい心の波立ちからのがれられないのだ。
だから。
「それでは、私とはどこまでも、睦まじくしてくださいますね」
わざと子供じみた言いまわしをして、木戸はふたたび大久保の手をとった。
「気持ちよくしてください。あなたと私の友好のしるしに」
大久保の眼が底深く光ったようだった。
 
(いやなやつだ)
と、貫かれながら木戸は思っている。
さっきはあれほどゆるやかな愛撫をほどこしたくせに、大久保は、今は木戸の両腿を押えつけて、熱く熟れた粘膜を、突きやぶりそうなほどに深く激しく犯している。
「痛い、」
と洩らしたのはべつに媚態を示そうとしたのではなく、感じたままをおもわず口にしたまでである。
「いっ……ぁ、もっと、ゆっくり……」
覆いかぶさっている体を押しのけようとのばした手は、しかし、大久保にすげなく払われる。
「おしずまりなさい」
まぐわっている最中ともおもわれぬ醒めた声に、木戸はびくりと体をふるわせた。その刺激のぶんだけ、さらに肉の奥が抉られる。
「ひ……っ」
「あいかわらず、ひどくされるのがお好みですね」
わざとらしいほどの、酷薄な軽蔑の言葉。
多分大久保はわざとなのだろう。さっきはああもこまやかに肌をなぞった彼なのだ。
(そういうところが)
虫が好かないのだ、と思う。
なるほど木戸は乱暴に抱かれるのが嫌いではないし、特に今日はそれを望む気分になっていた。なんだか、ひどくいらいらするのだ。御一新後までも薩人の不羈になやまされることも、その収束のために大久保のそばを離れられないことも。
(どうせ自由にはならぬ身だ)
ことに大久保には、互いにじかに顔をあわせる以前からたびたび煮え湯を飲まされ、士としての操を蹂躙せられている。
(いっそ……)
大久保に喧嘩をふっかけるような物言いをしたのは、あるいはこうされることを期待してだったのかもしれない。どうせ自分の進退ひとつ思いどおりにはならないのだ。それが政治というもので、大久保のせいではないのだが――。
大久保に、手酷く犯される自分。
木戸はそういうかたちに自分の境涯を書きかえて、われとわが目でたしかめておきたかったのかもしれない。
――それを。
おそらく大久保は察したのだろう。木戸がとった手を一度ふりはらうと、今度は手首を掴んで布団の上へ押しつけ、反射的に抗おうとした木戸の体に、体重をかけて乗りあげる。そのまま強引に脚を開かせ、いきりたった雄で刺し貫いた。
いやだ、と泣いて懇願するのを聞こえていないかのように、大久保は深く木戸を穿ち、慄える体を散々になぐさんだ。そのくせほとんど傷を残すようなことはせず、それはつまり、その暴行が芝居であることを証拠だてていた。
「大久保さん、大久保さ……苦、し……」
胃の腑のせり上がるほど突きあげられて、それでも木戸の体はしだいにその蹂躙に慣れてくる。いつもこうであればいいのに、と思う。それは抱かれている最中ではなく、彼に引きすえられて参じた廟堂で、自分の描いた中興の絵図が、一枚一枚、破られていく音を聞くとき――――
「はっ……、ぁ、」
男の味を知りぬいた淫肉が、乱暴な営みのなかにもわずかな甘さをひろいあげ、嬉しそうにその妙味を啜る。熱く熟れた粘膜は大久保に絡みつき、ひくひくと顫えて悦びをしめした。
「苦しい――と、おっしゃいましたか」
腹側のすこしかたい一点、淫楽がいびつに凝っている場所を突きながら、大久保が意地悪く尋ねる。その手が、木戸の陰茎をさすっている。張りつめて勃ちあがり、悦びの涙を流しているそれを弄びながら、これでも苦しいというつもりかと訊いているのだ。
「木戸さん」
とささやく彼の声が甘く、つめたい。
「さきほどのお話ですが――」
「あ、ぁ、や……」
「私は御一新の前から国元のことはすでに捨てたつもりでおります」
木戸の奥をかきまわしながら、大久保の声はひたひたと肉のなかを打つ。
「死して帰らぬ以前に、五体の無事なうちも、私は二度と鹿児島の土を踏むことはありますまい」
ただひとつ――とぴったりと体をかさね、木戸の耳許へ吹きつけるように彼はささやいた。ひ、と小さく洩らして目をつぶった木戸は、髪をかきなでる手にうながされるようにもう一度目をひらいた。
大久保の視線に絡めとられる。
彼はこれほど激しく木戸の熱を貪っているくせに、その瞳に情欲のゆらめきはなく、ただ底知れぬ深い暗い光を宿していた。それは絶望ではなく、むしろ彼の意志の色なのだったが、なにか自分に似たあきらめ――おそらく大久保においては発展的な――と、一点、しずかな瞋りのようなものを木戸は感じた。
大久保の唇が木戸の耳朶を喰む。その刺戟に濡れた溜息をつきながら肉の深いところで彼を締めつける。大久保のかすれた声が注ぎこまれた。
「ただひとつ、賊徒の討伐に立つ日をのぞいては」
「んぁ……っ」
その声の重苦しさに木戸は身悶える。それは沈鬱な音色であるはずなのに、どこか烈しく、燃えるようで、その埋み火のような熱さに、貫かれている粘膜が焼け爛れていく気がした。
「大、久保さ……、」
彼の背に四肢をからめ、自分から腰を振る。
(賊徒の討伐に……)
白く明滅する意識の片隅で、大久保の言葉を――彼と、彼に繋がれた自分のさだめを思った。
(結局逃れられぬのだ。誰も――――)
西郷が今後どうするかはわからない。ただ大久保は、木戸がひそかにそうあれかしと望んだ(と、自身あまり積極的にみとめたくないところのものだが)種類の苦衷と悲歎とを、一度はその身をもって知るにちがいない。
(ああ、そのとき)
と、大久保の体の下で喘ぎながら思う。
いつかくるであろうそのときも、やはり、彼のがわに繋がれていなければならない自分なのだろうか。
「もっと――」
大久保さん、と木戸は喉を反らせて叫んだ。
「もっと、犯してください」
求めた唇を、深く吸われる。やがて訪れた恍惚は、砂の底に沈むようなひどい倦怠をともなうものだった。
 
薄明のなかで目ざめると、嗅ぎなれたにおいがした。
大久保が、煙管をふかしている。
彼のために出した煙草盆を、そういえばゆうべは使わないままだったように思う。布団から這い出し、こちらに背を向けて煙を吐いているのは、まだ眠っていた自分を気遣ったのだろうか。
(冬の朝だというのに)
彼は寒くないのだろうか、と思った。
すでに火鉢の火は消えている。布団に戻ればいいのに、と思い、そう声をかけようとして、しかし木戸ははっと口をつぐんだ。
灰吹に雁首をあてる仕草は見慣れたそれであるのに、その音がかん、と高く、叩きつけるようであった。そのすぐあとを、雪もよいの凍った風が通るような音が追う。それがすぐに大久保の溜息だと気がつかなかったのは、その響きに彼らしからぬ荒々しさと、ある種の湿りけを聞いたせいであったろう。
(この男もまた、時勢の虜囚なのだ)
気の毒だと思わないかわり、べつにそれで胸がすくということもなかった。わかっていたのだ。抱かれる前から。
ゆっくりと吐いた息が白い。外は霜であろう。その細かにささくれた氷の先がちりちりと体の中にひっかかる気がして、木戸はぎっと音をたてて奥歯を噛みしめた。
大久保は、肚の底にあるものを吹きつけるようにして煙を吐いている。やがてそれにも倦んだのか静かになり、煙管を煙草盆の上に置いた。
彼がこちらをふりかえるかもしれないと思い、そうするといかにも今まで彼のようすを偸み見ていたかのような自分の格好がきまりわるくて――というよりも大久保のほうから声をかけられたくなくて、
「寒くありませんか」
彼が気づかないうちに、その背中へこちらから問いかけた。
大久保の肩がぴくりと動き、痩せぎすの顔がゆっくりとふりかえる。こころもち蒼ざめた頬に、くすんだ影がさしていた。
髭に半ば埋もれた薄い唇が、かすかにふるえて冷えた声を洩らす。
「あなたは、いかがです」
「私?」
木戸は布団の襟にそっと顎をうずめるようにして笑った。
「寒いですよ。いつでも」
――凍えるように。
そう答えると、大久保はゆっくりと一度まばたきをし、それからじっとこちらを見つめたが、何もいわなかった。
彼もおそらく、寒いのだろう。おなじ寒さに身を晒しながら、しかし肌や骨があじわうその感覚は、互いにまるで異なる場所にある。寒かろうと思うのはただの感想で、同情もしなければ、まして暖めあおうなどとは思わない。
それでも。
「お戻りになりませんか」
木戸は赤い椿の花芯がくずれるように微笑み、大久保にむかって布団をひらいた。彼もまた微笑に似たものを泛べ、ゆらりと立ち上がる。
日が昇りきるまでのいっときを、ふたたび抱き合ってすごすことになるのだろう。
ひらいた布団の端を大久保がもちあげ、彼の長い脚がするりと滑り込んで木戸の肌にふれる。
「ああ、冷えていらっしゃる」
「すぐに温もります」
それは思いやりの言葉ではなく。
互いの寒さをつめたく見つめあうために、木戸はみずから襦袢の襟をくつろげ、大久保の手はその裾を割った。
どこかで鳥の声がする。
都下の情勢はこれほど緊迫しているのに、結局今日もおなじ朝が来るのだと思って、木戸は乱れてゆく吐息にまぎらして、冷えた溜息をひとつついた。

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【2013/06/29 14:08 】 | よみもの
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