忍者ブログ
  • 2026.03
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 2026.05
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2026/04/05 05:48 】 |
モブ×桂(2)
桂さんがひどい目に遭っています。
暗いです。
 川の音にまじって、澄んだ虫の音が遠くに聞こえはじめていた。
 草の香が涼しい土手の上で、しかし、獣がひくく唸るような声が、そこだけ異様な感じを醸している。
 仰向けに転がされた小五郎は、首をのばして大崎の姿をたしかめた。
 彼は下帯だけの姿にされ、夏羽織の紐と帯で手足を結わえられ、口に手拭いを突っ込まれている。その手拭いの奥から、かなしげな声は洩れている。
 「見えるか?」
 と小五郎の脚を押さえている男が、大崎を振り返る。呻き声が高くなる。
 「よしよし、ちゃんとそこで見ていろよ」
 男はほくそ笑むと、小五郎の襟に手をかけた。
 (袋叩きにするんじゃないのか……)
 小五郎はわきあがる恐怖をどうにか奥歯で噛み殺しながら、眼だけをぎょろぎょろさせて、じっとしていた。抵抗すれば、大崎は殴られるか、蹴られるか、あるいは川に投げ込まれるか――どのみちひどい目に遭うだろう。
 (それにしても)
 と思った。
 かれらはいつからこうまで大崎を目の敵にするようになったのだろう。以前からうるさくからんではいたが、それはあくまでたちのよくない戯れの範囲のことで、ここまで乱暴なことはしなかった。
 (なんだか、私が……)
 と、小五郎の懸念は近頃もっぱらそこにあった。かれらが小五郎にも因縁をつけるようになってから――あるいはそのすこし前から、どうもようすが変わってきたように思う。どうやら自分が関係して、なにかかれらを今日の暴行に駆りたてたのではないかと、そんな気がしている。無論、その理由にまったく心あたりはないのだが。
 いずれにしても、自分があらがったせいで、大崎がいたぶられるようなことがあってはならない。殴られるくらいは我慢しようと、怖いながらも覚悟をきめていた。
 が、かれらは小五郎を殴らなかった。
 一人が小五郎の両腕を頭の上で押さえ、一人が正面から襟をつかんだ。そうして、勢いよく左右に割りひろげる。
 (おんなじようにされるのか)
 大崎のように裸にされて、縛られるのだろうか。すでに腰の刀は取り上げられてしまった。髷でも剪られるかな、と思った。そうして裸のまま往来に放り出して恥をかかせるという制裁方法も、あるにはあるだろう。
 (勝手にすればいい)
 小五郎はぎっと唇を噛んだ。そんなことをすれば騒ぎになる。大人たちに知れる。かれらもただでは済むまい。
 (そこまでの覚悟があるなら、やってみればいい)
 小五郎も、大崎の前でこそしおらしいが、ひとたび藩校から家に帰れば、川に潜って舟をひっくり返したり、挙句船頭に殴られた程度には悪童である。力では目の前の男たちにかなわないが、かなわないなりにふてぶてしい肚のふとさというものがあった。
 それが、どうもおかしいと――これからおこなわれることが、並の喧嘩や狼藉ではないと気がついたのは、小五郎の襟を抜いた男の手が、妙なやわらかさで胸を這いだしたときである。ぞくりとふるわせた首筋を、ぬるりとしたものが撫でた。舌で舐められたのだとわかった瞬間、小五郎は叫び声をあげていた。
 「何をなさいます」
 途端に、男が下卑た声をあげて笑った。
 「何をされる気でいたんだ。馬鹿だな」
 「人を呼びます」
 「呼んで来るものならとっくに来てるだろう。第一お前、女にされるところを人に見せたいのか」
 腕を押さえていた男も、大崎を小突いている男も、一斉に笑った。ようやく、小五郎は自分の迂闊さを知った。
 (女に――)
 女にふれたことがなくとも、女にするとかされるとか、その意味ばかりはおぼろげに理解している。
 「今日がお前の初見世だ」
 ゆっくりとささやかれて、小五郎の全身はつめたくこわばった。大崎の悲鳴が聞こえる。彼の眼から涙が溢れて、そのほとばしるような激しい流れを、小五郎は、自分の体が引き裂かれて散らす血潮のようにも思った。
 
 はっ、はっ、と男の獣のような息遣いが耳朶を打つ。
 突き上げられるたびに胃の腑がせりあがって、口から出そうに思われた。
 男たちの意図を知ってから、そうされるまでに小五郎は無論全身で拒んだ。しかしすでに四肢はかれらに押さえられており、あとはせめて声をあげたり腰をよじったりしたが、それくらいのことではとうていどうにもならなかった。
 大崎の欷歔の声がむなしく響いている。彼はもう呻くのをやめ、ただかなしげに、洟をすすりあげていた。顔をそむけようとしては男たちに髪をつかまれ、頬を張られて、小五郎が陵辱されるさまを見せつけられている。
 愧ずかしいと思うゆとりすら、小五郎にはなかった。心よりもひたすら、肉体の苦痛が意識を苛んだ。男の欲望に引き裂かれた場所は、貫通の瞬間の衝撃こそ今はひいているが、しかし無理に擦りあげられることで、灼けるような痛みが絶えず神経を圧している。生温かいものが滴り落ちる感触は、おそらく血が流れているのだろう。
 歯を喰いしばって、小五郎はその一方的な蹂躙に耐えた。
 しかしこれほどの苦しみを強いてなお、
「きつい」
 と、男は不服げに鼻を鳴らした。
 「もう少し緩めろ。痛い」
 これでは気をやれぬ。
 まったく身勝手なその言いぐさに噛みついてやる気力もなく、ただ早く終わってほしいと思った。男は何度か同じことを繰りかえしていたが、やがて、
 「おい」
 小五郎の腕を押さえていた男が呼びかけた。
 「こいつはおぼこなんだろう。女郎のようにはいかないぜ。特に男の初物は、ちょっとこつが要るんだ」
 かわってみろ、という。小五郎を嬲っていた男は、それでもしばらくぐずぐず言っていたが、やがて動きを止め、
 「……っ、う、」
 ずるりと内臓が引き出されるようないやな感覚を残して、小五郎の中から出ていった。一瞬、助かったと思った。鼓動にあわせて傷口が疼く、その痛みの律動のなかで、さっきかれらの一人が「かわってやる」と言ったことをぼんやりと考える。そうしてその意味に思いあたる前に、
 「ひ……っ!」
 再び、責め苦ははじめられた。
 ただし、今度の男はすぐにそこを貫くことをしなかった。小五郎が驚いたのは、男の舌が乳首をねぶったせいだった。
 「気持ち悪いか? はじめは仕方ないな」
 じきにこの味を覚えればよくなる。それまでは、体の感じるように、素直に受けとめることだ。
 しゃあしゃあと、まるで親切で教えてやっているのだとでもいわんばかりに、男は小五郎に説き聞かせる。そんなことをいわれても、なまぬるい舌の感触に背筋がぞくぞくとするばかりで、少しも心地よくなどはなかった。
 「金で士格を買っただけあって、いいものを食っているんだろうな」
 吸いつくような肌をしている。男は小五郎の胸から腹にかけてをさかんにまさぐりながらそう言った。
 「なまなかな女よりいい」
 自分は、女ではない。
 士籍に列していることにしても、金で購ったのではない。乞われて養子に行ったのだ。家の躾は武家風に質素をこのみ、贅沢な食事などはしていない。
 言い返したいことは山ほどあったが、小五郎は奥歯を噛みしめて、じっと口をひらかなかった。男の濡れた唇が乳首を吸いあげて、体の芯がむず痒くなるような妙な感覚に、さっきまでの苦痛によるものとはちがう、湿った溜息が洩れる。そのじっとりとした何ともいえない生あたたかさが、自分ながらいやだった。
 「もう自分でさわることくらいは覚えているだろう」
 男の手が、そろりと陰茎に触れる。やわらかな手つきがどうにもわざとらしく、気持わるい。
 「下帯を汚したことがあるだろう」
 (知らない、知らない――)
 さっきの男に強いられた激しい痛みから解放された小五郎は、ようやく大崎の目のあることが気にかかりはじめていた。指先のわずかなしぐさから声の響き、目許の表情まで、何もかもが清潔な彼の前で、男たちに辱められる。まだ知らぬ唐土の伝説や藩祖の英雄譚を、彼のものやわらかな声で聞くとき、いつも衣服の下で人しれず高鳴っていた胸は、今は男の唾液に汚れている。
 (触るな――)
 その一言がいいたいのに、男の掌に陰茎を握られて、小五郎は息を呑むことしかできない。もっとも、よせといったところで男たちの蹂躙が已むとは思えなかったが。
 それでもせめて、大崎の前では最後まで抵抗したい。彼の目から逃れることをゆるされないならば、せめてたやすく男たちの思いどおりにはならない自分でいなければと思う。
 ちぎれそうな思いの上を、その薄い皮膚を男の舌が這い回り、陰茎を握る手に力が籠められる。
 「痛……っ」
 跳ね上がることすら自由にならない。頭の上では、さっきまで小五郎の中にいた男と、ずっと腕を押さえる係を言いつかっている男との、荒い鼻息が聞こえている。
 「女はまだ知らんのか」
 そこを擦りながら、男が猫撫で声でささやく。
 「そろそろ覚えてもいい頃だな。言うことを聞いていれば、いずれ奢ってやろう。女は、いいぞ」
 ただ残念ながら、お前ほどの上玉はそうはいないがな。
 ささやきながら、先端を軽くくじられる。
 (馬鹿な)
 しかし吐き捨てたいほどの思いとは裏腹に、小五郎の背はその刺激にひとりでにしなっていた。知識も経験もなくとも、体はすでに、それを待つまでに育っている。ふだん大崎の横顔を眺めながら、いつもあれほど早く大人になることを願っていたのに、その大人に近づきつつある自分の体が、今はひどくうらめしく、惨めだった。
 そういう気持をまさか悟ったわけでもあるまいに、男はことさら子供に対するようにして小五郎に声をかける。
 「さてさて、さっきは痛くて、つらかったな」
 うん? と、顔を覗きこまれる。唾でも吐きかけてやりたかったが、それよりも男と顔を近づけているのがいやで、小五郎は首をねじまげてそっぽをむいた。
 「かわいそうにな。俺は、もう少しよくしてやろうな」
 「おい」
 さっきの男が不服げに声をあげる。
 「なに、」
 と、睨まれた男は肩をすくめて笑った。
 「お前が拙(まず)いと言ったのじゃないさ。ただ、こつがあるだけの話だ。それさえ飲み込めば、女の陰(ほと)のようにできる」
 女よりいいぞ、というのを聞いたとき、大崎の歔り泣きがはげしくなった。ああ、よほどひどく辱められるのだろうと、その声に小五郎は瞑目した。年端のいかない自分よりも大崎のほうが、これから自分にくわえられる陵辱がどういうものか、よくわかっているにちがいない。
 と。
 「ひっ」
 はじめて知る感触に、次の瞬間、小五郎はふたたび目を見ひらかねばならなかった。
 男の頭が、下腹に移動している。彼は手でそこを扱きながら、先端をちろちろと舐めていた。
 「あ、やめ、」
 背筋を熱いような寒いような、おかしな慄えが駆けあがる。
 男はやがて口のなかに小五郎を含み、舌を這わせながら吸い上げた。
 「や、嫌だ、離……っ」
 激しく頭を振るばかりで、数人がかりで押さえ込まれている体は逃れることもできない。
 男の口内が、熱い。
 『女の中は熱いぞ』
 年長の友人から、かつてそんなふうにささやかれたことがあった。小五郎はそのとき何とも答えず、ただそういうものかと思って頬を赧らめただけだったが、いま男の舌に絡めとられて、不覚にもその友人のたわむれを思い出していた。
 (肉のまじわりとは、こういうものだったのだろうか)
 そこにはなんの悦びもないのに、しかし刺戟をあたえられた陰茎は、小五郎の感じている思いとはかかわりなく、雄の漲りをみせはじめている。
 「くっ……、ぅ、」
 腰のあたりにぞわぞわと血があつまり、しだいに張りつめていくそこが苦しい。額に、さっきの痛みに耐えかねての脂汗とはちがう、じわじわと孕んだ熱が結露するような汗が、玉をなしてうかんでいる。泣きたくもないのに、滲んだ涙が視界をゆがめる。
 男は一度そこから唇を離し、
 「なかなかお前は、年のわりには早熟だな」
 舌なめずりをしながら言った。
 「これならもう、登楼しても恥はかくまいよ」
 だが、男になる前に女にしてやる。残酷なその宣言も、そのときの小五郎にはもう、聞き飽きたという感じが濃かった。
 (なんでもいい)
 どうでもいいから、早く終われ。
 熱に誑かされた体が、心までも鈍くするのだろうか。小五郎はすでに辱めを逃れることよりも、一刻も早くこの時間が過ぎさって、解放されることしか考えていなかった。けれどもその解放というのが男たちによる絞扼を解かれることなのか、それとも自分のうちを掻きみだしつつある奇怪な熱を外へ放つことなのか、そのときの小五郎にはよくわからなかった。
 「こっちに集中しているといい。そのほうが楽だ」
 男の掌は、なおも小五郎の陰茎を包んだまま上下している。そうして、
 「ひぁ……っ!」
 思ってもいなかったところ――さきほど別の男に苛まれ、傷つけられた場所に舌先が触れる。
 「な、何……、」
 「何といって、お前、」
 男の笑い声がそこをくすぐる。
 「こうしてやらねば、また怪我をするぞ」
 ずいぶんひどくされたものだ。
 文言どおりならばいたわりの言葉であるはずのそれは、しかし自分を嬲り、もてあそぶものにしか聞こえなかった。
 「こうして濡らして、な、」
 舌がうごめいている脇から、指を押しあてられる。それはゆっくりと秘所を撫で、押しほぐし、やがて襞の窄まった中心へ突き立てられた。
 「ぅ、あ……」
 男が唾液を塗りこめたせいだろう。ぬぷり、と濡れた音がして、指先が中へ入ってくる。痛みはなかったが、体の内側を撫でられる感触が気味わるかった。強引に穿たれたときは激しい苦痛のために感じるゆとりのなかったそれを、今は襞のひとつひとつにゆっくりと擦りこむように教えられる。
 「どれ、まだ入るな」
 男は嬉しげにそういうと、さらにもう一本、指を潜らせた。
 「……っ」
 入口が拡げられ、咥えさせられているという感じが増す。さっき男根を捻じ込まれたときの感覚に、しだいに近づいてゆくのがわかる。けれどそれは引き裂かれる痛みではなく、あくまで体内を圧迫される感じ――いきすぎた充足感だった。
 「慣れてきたようだな。お前はなかなか筋がいい」
 今にここで悦べるようになる。
男は恐ろしいことをささやくと、
「さて、俺の知るかぎりでは、」
このあたりに、と指を曲げた。そうして少しずつ角度を替え、位置をずらして中を探っている。小五郎にはそれが何をするためのしぐさなのかわからず、ただ男の指がうごめくのが不快で腰をよじったが。
「ぁふ……っ!」
一瞬、ひねった腰が筋をちがえてどうにかなったのかと思った。
はじめびりりと電(いなずま)が走るように感じたそれを、痛みかと思って小五郎は怯えた。しかしその愕きが去り、とらえた感覚の正体を徐々に体が咀嚼しはじめると、
「ん……ぁ、あ……」
今まで知らなかったその感じに、小五郎は身悶えた。
体の奥、肉か骨かもよくわからない、ひょっとするとそれよりももっと深い場所がびりびりと顫え、そのまわりをめぐる血が激しく疼く。痛くはないが、しかし知っている感覚に置きかえるなら、痛みにもっとも近いかもしれなかった。
「なるほど、ここだな」
男の声がほくそ笑んでいる。すこし触れられただけでも体が跳ねあがるそこを、さらにぐりぐりと押され、離してはまた突かれる。
「や、あ、あぁ……っ!」
こわい、と思った。
さっきあれほどの痛みとともに押しひらかれたとき、体がそこから二つに裂けるのではないかと思った。しかしそれでも感じなかった、自分が壊れて霧散するのではないかという恐怖――肉体の生存ではなく、自分が誰で何を思っているかという、たとえ斬り殺されても犯されないはずの何かが砕けて消滅するのではないかというむごたらしいおそれが、小五郎の薄い胸を襲っていた。それを歓喜として感じるには、少年の体も心も、まだ熟してはいなかった。
それでも、小五郎の陰茎は形を変えつつある。
「お前には、淫乱の気があるようだな」
いわれた言葉よりも、高められていく体が切ない。
「安心しろ。俺はそんなことでお前を蔑んだりしないさ。――そこの八徳先生のようにはな」
男のささやきのあとから、くぐもった嗚咽が聞こえる。
(大崎さん――)
ああ、嫌われるのだろうか。そのことを、小五郎はもうどう考えてよいのかわからなかった。熱に痺れた脳髄が、思いをめぐらせるはしから焼き切ってゆく。
「可愛がってやろうな」
そう言いながら男がのしかかってきたとき、ただその熱さだけを感じていた。
 
(今、何人目だろう……)
小五郎は虚ろに目をあけて、男の汗ばんだ肩越しに、暗くなった空を見上げている。今夜の月は朧で、星はなかった。涼しいなかにもすこしだけ湿った夜気が、やがてくる盛夏の匂いをつたえていた。
けれど。
夏の訪れよりも、いま自分の体を贄にしてひらかれている狂宴は、いつ果てるのだろうか。
男の呻き声にあわせて、小五郎も喘いでいる。一体それは、快楽なのだろうか。
高められてゆく体は、しかし、最後の絶頂を迎えることはなく、小五郎は疲労のためにしばしば意識が遠くなった。暴かれている粘膜は熱いが、しだいにそれは自分とはべつの場所でおこっていることのように――享けている感覚はこれほど激しいのに、それすらなにか自分の体を離れて遠くにうち寄せる波の音を聞くように、ぼんやりと濁った霞のなかを小五郎は漂い、夢寐のうわごとにも似た声をあげた。
獣のように体を穿っている男は、これが何人目だったろうか。まわりにいるほかの男たちは、だまって小五郎を押さえつけているわけではなく、それぞれ肌を舐めまわしたり、陰茎の先をなすりつけたり、ときに口にふくませたりする。そのどれが誰の手であり舌であり陰茎なのか、小五郎にはもう、よくわからなかった。
時間も、あれからどれくらい経過しているのだろう。大崎はあいかわらず縛られたまま泣いていて、それを悲しいと思うよりも、よく涙が枯れないものだと、埒もないことを考えたりした。
男たちは肉の愉しみをおぼえたばかりの、若い盛りである。かれらは飽くことをしらず、かわるがわる小五郎に挑みかかった。多分、一人一回ではなく、すでに何周かしているのだろう。
(苦しいな……)
貫かれている場所ではなく、かれらの精を注がれている腹のことを思った。蛙の尻から息を吹き込んで腹を膨らす野卑な遊びがあるが、ああして弄ばれた蛙のように、自分の腹もついには裂けてしまうのではないか。
(それは、いやだな)
そう思う意識もすでにおぼろで、小五郎はそれを恐怖として感ずるよりも、ただ、醜く腸(はらわた)を散らした蛙の死骸を思い浮かべて、
(気持わるいな……)
荒々しい音をたてて熱の滾った肉を拍ちつけられながら、屈辱も苦痛も、さらには快楽も忘れて、ただその労働に倦怠した溜息を、幾度も深くついた。
 
小五郎が目覚めたとき、月は沖天にさしかかっていた。
虫のすだく音が高く冴えて、そこではじめて裸に剥かれたままの体のつめたさに身震いした。
「……ぅ、」
身を竦ませた拍子に、犯されたところから男たちの慾望の残滓が流れ出る。あの陵辱の時間は夢ではなかったのだと、滴り落ちる精の生暖かさに思い知らされた。かれらは、とうに満足して帰ったのだろう。すでにその姿は見えなかった。
(ここで夜を明かすわけにはいかない)
何度も何度も捻じ込まれ、突き上げられた体が怠い。銜えさせられた部分は脈打つたびに疼き、少しくらい流しただけのことではとうてい空にはならない腹は、あいかわらず重苦しい。それでも、立って家へ帰らねばならなかった。藩校へ出たきり帰らない小五郎を、両親は心配しているだろう。
手をついて、ようやく草の上に半身を起こす。体がふれるにしたがってざわざわと鳴っていた草が静かになったとき、小五郎は、犯されているあいだ夢うつつに聞いた響きが、今もひくく夜気をふるわせているのを知った。
「大崎さん……」
声に出して呼ぶと、そのかすかな音は――大崎のすすり泣く声は、一瞬息をのむようにしてやんだ。
最後にひっとかすれた悲鳴のような声が聞こえたその方角へ首をめぐらすと、大崎は小五郎が喪神する前に見た姿のまま、叢にうずくまっていた。
両腕を後ろ手に縛られ、足首も縛められて、下帯一枚の彼は、両脚を正座のかたちに折って、上体を深く屈めている。地面に額を押しつけている彼の表情は見えない。だが、小五郎のように強淫されなかった彼は小五郎のように気絶することもできず、目の前で繰りひろげられる乱倫を前に、そうしてただ泣いていたのだろう。
「大崎さん、」
小五郎は重い体をひきずって、彼のそばへにじり寄った。大崎の痩せた肩がふるえている。傷ついた小鳥をいたわるように、その肩へ手を載せようとした小五郎は、しかし、あと紙一枚の距離で肌にふれるというところでふと手をとめ、そのまま引っ込めた。
大崎の体がこわばっているのがわかる。
彼は顔をふせたままだったが、小五郎がそばへ寄ってきたことも、その手が自分にのばされたこともわかっているだろう。が、顔を上げず、じっと身を硬くしている彼のようすに、
(……ああ、)
小五郎はそこではじめて自分が犯されたことの意味を――穢されたあとのからだを生きる自分は、もうもとの自分ではないのだと知った。
(傷つけてしまった――)
その感慨はおかしなことではあるのだが、理由もなく、ただなんとなく小五郎はそう思った。引き裂かれ、血を流した自分よりも、暴虐に遭ったのはむしろ大崎のほうではなかったか。
『大崎はお前に懸想している』
男たちが言ったことばの意味をよくわかったわけでも、信じたわけでもなかったが。ただ、やさしくあえかな大崎の心は、さっきまでの陵辱劇にさんざんに躙(ふ)みにじられただろうと、小五郎はそれを痛々しく思うのだった。
人が、人をあんなふうに犯す。何よりも、犯された者が、しだいに辱められることに狃れて、肉の愉悦の淵へ堕ちてゆく。小五郎は最後にはただ労れきっただけだったが、途中たしかに快楽か、あるいはそうでなくともそれに近い肉体の感覚を得ていた。そうして抵抗することもやめ、だらしなく男たちの前に体を投げ出していた。かわるがわるそこで繋がって、嬌声をあげながら男たちの精にまみれてゆくさまは、ひどくあさましく、醜いものであっただろう。そういうものを見つめつづけることは、大崎の心を無惨に掻きみだし、圧したにちがいない。理知と善意とによってのみ彫琢されたかのような、彼の白い横顔。いつもそれをまぶしい思いで眺めていた小五郎には、今このとき彼が顔を上げようとしないわけが、よくわかる気がした。顔をあげれば――この荒淫の余香ののこる空気のなかへその薄い肌を晒せば、きっと灼け爛れて、腐り落ちてしまう。
だから、
「大丈夫です。何もしません」
ようやく彼の耳に届くほどの声で、小五郎は囁いた。それもなるべく自分の吐息が、彼の肌にかからないように。
「余計なことも申しません」
ただ、その手を、と、大崎の両手を縛めている紐――それは彼の羽織から抜きとったものなのだったが――にふれた。
「これだけ、解いてさしあげます」
そうして、ぎっちりと固められたその結び目に爪を立て、指を入れ、どうにかほどききった。そのあいだ、大崎は声もあげず、身じろぎもしなかった。
(ああ、擦り切れて……)
拘束からのがれた大崎の手首は、朧な月明かりの下でも、傷ついて赤くなっているのが見えた。小五郎はおもわずそれにふれようとしたが、すぐに気がついて手をひいた。
大崎はまだ、足を縛られたままでいる。それに、うつむいていてよく見えないが、口にも手拭いを突っ込まれたままではなかったか。だが、手が自由になった以上、それらは彼が自分で何とかするだろう。
「帰ります」
そう言い置いて、あたりに散らばった着物をまとい、着流し姿に帯だけぐるぐると巻きつけると、佩刀をひろって一揖し、あとは背をむけて去った。
最後まで、大崎は一声も発しなかった。
河原の道を辿りながら、小五郎は背後に遠ざかる彼の沈黙を、自分への罰のように聞いていた。胸のうちで何度も詫びた。どうしてそうせねばならないのか小五郎自身にもわからなかったが、ただひたすら彼に詫びつづけて――そうしていつかはゆるされたいと願っていた。自分を犯した男たちへの恨みつらみよりも、犯された体のかなしさと、大崎への罪悪感が、小さな胸を潰れそうなほどに締めあげていた。誰もいない細い道をふらつく足で辿りながら、小五郎はその日はじめて涙を流した。流すほどにとまらなくなり、どうにか声を噛みころして、しゃくりあげながら歩いた。洟をすするたびに傷つけられた体の奥が灼けるように疼いて、その痛みもまた、自分の罪を咎めているのだと思った。

拍手[44回]

PR
【2013/02/26 16:32 】 | よみもの
<<前ページ | ホーム | 次ページ>>