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1日早いですが聞誕おめっとー。
しばらく御無沙汰だった聞木戸を上げておきます。 この2人いつから書いてなかったかな……と思って確認してみましたところ、 6月27日 以来でした。半年ぶりwww しかもそれも間違いなく井上×木戸かというとなんか違うような……。 とりあえずものすごく聞多がおあずけ喰ってたのは間違いありません。 だからというわけでもないですが、もうほぼソレだけの話です。 指だけじゃどうたらこうたら、という台詞は前にも使ったよなーと思ったらこれ でした。 ネタの緊縮財政です(キリッ 以下、よみものでございます。 『霜冴ゆる』
明け方、夢を見た。
色も音もひどく鮮明で、醒めてからも今までのが夢だったと理解するまでに、ややしばらくかかった。ひょっとすると魂が身からあくがれ出でて、夜のあいだを翔り来ったのではないかと思ったりした。 (――冷えるな) 布団の上に胡座をかいてぼんやりしていた井上は、ようやくあたりの寒さに気がついて肩をふるわせた。昨日など手水鉢の水に薄氷が張っていたが、今日もおおかた似たようなことになっているかもしれない。 (顔を洗わにゃならんな) そんなごくあたりまえの習慣が、今朝はことさら意味のあることに思えた。本当は行水でもしたいところだったが、この寒さである。それでせめて顔だけでも念入りに水垢離しておこうと思った。そうでなければ、とても参朝できない。 (行きたくねえなあ) 単に怠け心ではなく、そう思っている。行けばろくなことにならないような気がするが、といって今休むわけにはいかない。遣欧使節団の出発を間近に控えて、各省とも目のまわる忙しさだった。特に卿の大久保が抜けてしまう大蔵省は、大輔の井上が実質の長官として切り盛りせねばならなかった。おまけに今日は、使節団員と留守政府組の主だった面々があつまっての会議がある。井上が顔を出さずにすむわけがなかった。 足裏にびりりと響くような冷たい廊下の板を踏みながら、あーあ、と、あくびとも溜息ともつかない声をあげて、頭をかきむしる。 (こんなことなら、昨日……) と、後悔はそのことである。 (いい格好してことわるんじゃなかったな) ああ、もう。 「もう、鎮まれ」 だん、と床板を踏み鳴らして舌打ちすると、すれちがった下女がおどろいて肩をすくませた。 (やっぱり休むんだったかな) 正院の一室、大きな円卓の一隅に座を占めて、しきりと手帖を繰りながら、井上は重い頭を掌に支えた。 今日の会議の内容そのものに、さして意味はない。だいたいのことは事前にすりあわせがおわっていた。それをわざわざ一同がこうしてあつまるのは、使節団出発後の事務を円滑にすすめるため――ありていにいってしまえば留守組とのあいだに感情の齟齬をおこさないために、親睦会のようなことをしているにすぎなかった。無論、それはそれで、大事なことにはちがいないのだが。 (なんでまたそんな格好で来てやがるんだよ) 斜め向かいに座っている木戸をじろりと盗み見、また目をそらした。 「そんな格好」もなにも、木戸は黒の紋服姿で、いたって常識的な服装でいるのだが、早くから洋装をあつらえている彼が、めずらしく和服でやって来ていることが、井上には(勝手なのだが)いまいましかった。というよりも、ひやりとした。 彼の首筋に、ありもしない情交の痕をさがしてしまう。それは今朝方の夢のなかで、井上自身がつけたはずのものだった。 『聞多……』 夢のなかの木戸は、いつもよりさらにしっとりと情慾に濡れて、頬をすりよせながら井上にしがみついた。そのうっすら腫れて見える目もとの赧らみは、あれはとても夢寐のまぼろしともおもえなかった。彼の吐息が鬢の毛をくすぐる感触まで、はっきりと思いだすことができる。 (やっぱり、見栄張って無理をしたからなあ) 井上はそんなふうに自身の迷いを観察している。慣れもしない我慢をしたのが、そもそもいけなかった。 昨日、公用に関してふと木戸に聞いておきたいことができて、手紙を書いた。木戸は他出していたらしく、夜になって返書が届いた。今から会って話してもかまわない、自分が行くか、それともそちらが来るか、という内容だった。 (今でも明日でもおなじだな) そう考えたのは、ごく常識的な判断であったろう。すでに深更であったし、急ぐ用件でもなかった。それに第一、洋行を直前に控えて、木戸は多忙である。 (疲れてるだろう) と思った。今夜は遠慮するのが筋というものである。しかし一方で、 (惜しいな) と思う気持がないではなかった。 いったん出航してしまえば、木戸の帰りは早くとも半年の後である。その間、彼の肌に――あの甘美な温もりにふれることはかなわない。わずかの間でも、公務の隙をかいくぐるようにして、井上は木戸を抱きたかった。 しかし。 (近頃、ろくに寝てないみたいだからなあ) それはかならずしも彼の癖(へき)である憂憤のために、というのではなく、訪ねてくる知合いに会ったり、日本での遊びおさめに紅灯の巷へ出入りしたりということでもあったが。 それでもともかく、木戸はこの頃とみに疲れているように見えた。 (洋行前にへばらしちゃまずいだろ) 惜しくはあった。向こうが会ってもいいと言っている以上、すぐにでも押しかけて体をひらかせたかったが、そこを井上はこらえた。 (あんまりがっついてもみっともねえしな) 思いやったようでいて、いわばそうして木戸にいいところを見せようとしたわけだったが、これが祟った。 (あんな夢を見るくらいなら) 素直にゆうべ犯しておくのだった、と、一夜明けて井上は悔いていた。 木戸は配られた資料の謄しに目を落とし、さっきからしきりにその長い指のさきで、唇から顎のあたりをゆるゆると撫でている。なにか考えこんでいるときの、それが彼のくせだった。が、井上はそんなことよりも、指の下に見えかくれする彼の唇の淡い色を、いっそ憎らしくさえあるように睨みつけている。今は端正に引きむすばれているあの唇が、井上の体の下ではしどけなくほころび、熱い吐息と、甘い声とを洩らす。そうして汗と涙に濡れながら、 『聞多、』 恍惚として自分の名を呼ぶ、あのときの響きは、それを聞くためなら身代を傾けてもいいと思うほど、体の芯がふるえるような艶があった。 もっとも、ときに井上は、木戸をすぐには貫かず、彼の慾を苛む。 「どうしてほしいか言ってみな」 そう言うと彼はかなしげに唇を噛み、しかし結局は快楽の前に屈して、 「……挿れてくれ」 みずから両腿をひらき、そこを露わにしてねだる。 「挿れてるじゃねえか」 そう言って中でぐるりと指を回してやったときの彼は、美しい両眸(め)に涙を滲ませ、肩をふるわせながら、 「指じゃ、なくて、」 お前が、と井上のそこに触れた。 「お前がいい」 「しょうがねえな」 のしかかった、体の熱さ。 「これで、いいか」 「もっと、奥……」 「こうかよ」 「あ、まだ、」 「ほら」 「や……、」 限界まで深く入りこんで、 「これ以上は、俺には無理だぜ」 それもはっきりとは聞こえていないように、彼は悦びに背をしならせて、低く啼いていた。 「満足ですか」 「動い、て……ほしい……」 「そいつはどうかなあ」 ほつれ毛をかきあげてやった彼の額はしっとりと湿って、その汗は自分とおなじ汗であるはずなのに、ひどく甘くなめらかな、そうして淫靡なものであるように感ぜられた。 「あんた、もうこんなに汗だくになって、苦しそうじゃねえか。これで動いたりして大丈夫なのか」 死んじまうんじゃねえか。意地悪くそう言ってやると、 「聞多……!」 怒ったような、しかし切なげな顔で木戸はちいさく叫んで、自分から腰を揺すった。 「誰が自分で動いていいって言ったよ」 そういいながら、井上ももはや木戸を焦らしているだけではどうにもならなくなっていた。彼の腰を抱えなおすと、深く激しく穿った。 (あれはわりと最近だったな) じゃあ、あれは……――。 数えきれぬほど木戸を抱いてきたなかで、とくに思い出ぶかい夜のいくつかを、井上はつい、記憶の鏡に照らしている。そのときの木戸の声、仕草を、ねっとりと嬲ってやるように脳裡にうかべながら、射るように眼前の木戸を見つめている。 「……輔、大蔵大輔」 自分を呼ぶ声に、ふいとその追憶から引き剥がされる。 「あ、……はい」 顔をあげて見る世界は、面白くもない男どもの群れだった。上席から三条が、気遣わしげに問いかけている。 「それで、大蔵省としては同意してくれますか」 「はあ」 (何の話だろうな) もとよりまったく聞いていなかった井上にはわからないが、ちらと大久保の顔を見てから、 (まあ多分、別段の話でもないんだろう) 「よろしゅうございます」 考えるより先に、しれっとして答えていた。 その苦痛の時間が果てたあと、井上はさっさと家へ帰ろうと思っていた。なんだか、ひどく疲れた。帰ってすこし休んでから、あとのことを考えたほうがいい。それで伊藤や大隈が話しかけてくるのも適当にあしらって、さっさと退室してしまおうと思ったのに、 「井上君」 後ろから、よく通る声で呼びとめられた。振り向かなくてもそれが誰のものかはわかっている。 (今日は、よくよく) ついていない。そう思って、一瞬天井をあおいだ。 「井上君」 聞こえていないと思ったのか、声はさらに近づいてくる。 「――なんでしょう」 いささか不承げに、井上は木戸をふりかえった。 「話がある」 「はあ」 「時間があるか」 二人のときならまだしも、ほかに人のいる前でいわれては、下手な言い訳もできない。 「伺いましょう」 仕事の話を無下にしては、あとで直属の上長である大久保の不興を買おう。 「そうか」 と言った木戸の顔は、かすかに苛立っているようにも見えた。もしやさっきの三条の質問は、なにか具合のわるいものだったのだろうか。まずいな、とそっと唇を湿したが、木戸はいたってそっけなく、 「私の部屋で話そう」 ぷいと背をむけると、先に立って歩きだした。 「木戸さん」 廊下を歩きながら、彼の背に呼びかける。木戸は振り返らず、返事もしない。 「ねえ、どうしたんです」 機嫌をとるようにへらりと笑いながら問いかけたが、彼は無言で歩き、彼の執務室の前まで来ると、扉を開けて先に入った。 「あの、」 「いいから入れ」 有無をいわさぬ声だった。 (こりゃ相当おかんむりだな) 話とやらは長くなるのだろう。泣かれるといやだな、と思いながら、井上は首をすくめて鴨居をくぐった。 と、脇に立っていた木戸がすばやく施錠する。 「あの、何か」 余人に聞かせられないほどの譴責をこうむるのだろうか。おずおずと木戸の白い顔を見上げると、 「じろじろ見るな」 叩きつけるようにそう言われた。 「えっ」 おもわず首を突き出すと、 「見るなと言っている」 「そ、それはすみません……」 「今だけじゃない」 木戸は井上に背を向け、つかつかと部屋の奥へ歩いていった。 「はあ、」 「さっきの、会議中もだ」 「ああ……」 たしかに見ていたが。 (そんなに、) 怒るほどのことでもないだろう、と思ったが、よくよく思いかえしてみれば、ずいぶん不躾に眺めていた。まして、会議の最中である。 (まずかったかなあ) そうはいっても、井上は井上なりに、やむにやまれぬ事情があった(と、自分では勝手に思っている)のだが。まさかそれを木戸に言うわけにもいくまい。 見るな、といわれたので、仕方なしに彼に背をむけたまま、その執務机に尻を半分乗り上げて溜息をついていると、 「言いたいことがあるなら言ったらいいだろう」 叫ぶようにして木戸が言った。 「いや……別に……」 「俺が何をしたっていうんだ」 井上はちょっとおどろいたが、 「べつに、肚になにかあってっていうわけじゃありませんよ」 もごもごと口のなかで答えた声は、木戸に届いていただろうか。 と、 「どうしてそうお前は……」 木戸の声が泣き出しそうに聞こえて、井上はおもわず振りかえった。そうして、 「えっ」 弾かれたように、彼は机から降りた。 「木戸さん」 「どうしてそう意地が悪いんだ」 会議のあいだ無人であった木戸の部屋の空気は冷たい。しかしそのなかで彼は、みずから羽織を脱ぎ、袴を捨て、いま長着にまで手をかけようとしていた。 「ちょっと、待っ……」 「昨日来なかったのもわざとなのか」 「はあ?」 「俺が何かしたか」 「いや、だから」 「来ないなら来ないでいい。だがそれならどうしてそういう目で見るんだ」 木戸は苦しげに顔をゆがませ、しかし井上を見ようとはせずに、顔をななめにして、足元の床を睨みつけていた。その眼からいまにも涙がこぼれそうなのが、離れている井上の目には見えないが、彼の声と表情でよくわかった。 「そういう、って……」 吸いよせられるように、ゆっくりと木戸に近づく。彼は逃げなかった。 「もう、嫌だ」 絞りだすようにそうつぶやくと、自分で襟をくつろげて肩を出し、それから傍らのソファに倒れかかるようにして体を載せた。 そうして、悔しくてたまらないというふうに涙をこぼしながら、ゆっくりと脚をひろげてみせる。愕いたことに、彼は下帯をつけていなかった。 「あんた……」 「抱いてくれ」 そこをみずからさらけだし、自分の指で撫でると、ぎゅっと目をとじて奥へむけてつき立てた。 「聞多……」 ふたたびうすく目をひらいてこちらを見つめながら、見せつけるように指を動かす。 「抱いてくれないか……頼むから」 ここ、もう……と示してみせる彼のそこは、既に硬く勃ちあがった前から零れたもので、ぬらぬらと濡れて光っていた。 「早く……」 もう一方の手が、ふるえながらさしだされる。茫然と木戸の痴態を見つめていた井上は、その、目の前に花のようにぽっかりと浮かんだ白い手にはっしと意識のどこかを叩かれた。ひったくるようにその手を取ると彼の体の上に跨り、あわただしく自分の前をくつろげて、彼と繋がった。 「あ、聞多……、」 指一本分の緩やかさしかつくられていなかった木戸のそこはひどく狭かったが、彼は痛がりもせず、押しすすんでくる井上に甘い啼き声でこたえた。 「ん、ぁ……聞多、が……」 「俺が入ってるよ。奥まで」 ぐいと腰をひねってやると、白い喉を反らせて悦んだ。 「あんた、ゆうべからずっと……?」 抱かれたかったのか。そういいながら、彼の両脚を膝裏から押し上げて、肩につくほどにしてやる。しゃくりあげるような声があがり、中の肉がそれにあわせてびくびくと蠢いた。 「最近、会わなかったじゃないか……」 「あんたが忙しいから」 「だから、昨日……」 「誘ったつもりだったんですか」 彼の口を吸い、下唇を噛みながら囁いてやる。木戸はうらめしげに目をあげ、こくりと頷いた。 「今度からははっきり書きなよ。犯されたくてたまらない、ってさ」 「書いたら、来るか……」 「あたりまえだろ」 なあそれよりさ、と、木戸の体を揺すりあげながら、 「あんた、そんなに俺に抱かれたかったんですか」 今度は木戸は頷かなかったが、かわりに井上の首に腕をからめ、体の奥で締めつけた。慣れた感触ではあったが、味わうたびに、井上は自分の悦びが深くなっていくのを感じていた。 「お前が、来ないと言うから、」 合間に荒い息を洩らしながら、木戸が答える。 「あきらめて、ひさしぶりに早く寝(やす)もうとしたんだ。でも、夢を、見て……」 「夢?」 「おまえに、される夢ばかり……。だから、もう、体……が、」 疼いて眠れなかった。さびしく歎くようにそう言った。 「そんなの……」 俺とおなじじゃねえか。おどろいて言いそうになったのを呑み込んだのは、やっぱり見栄であっただろうか。 「大久保はどうしたね」 「え……?」 「そんなになってるんなら、いっそ大久保を誘えばよかっただろ」 「大久保……」 木戸はちょっと首をかしげるようにして、 「大久保、という気分じゃなかったな」 「なんだよそれ」 わざとぶっきらぼうに言い捨てて、木戸の好きな場所を突く。木戸がたまらずにあげる嬌声に溺れそうになりながら、激しく腰を使った。 「や、ぁ……!」 「なあ……大久保じゃだめだってんなら、さ、」 「んぁ……っ」 「ひとりですればいいだろ。さっきみたいに」 なあ、と奥を突きあげると、木戸がするどく悲鳴をあげる。 それから、 「指、なんか……」 聞きとれないほどの声でつぶやいた。 「あ?」 「指なんかじゃいけな……ああぁっ」 しまいまでいわせてみるのがこういう場合の興というものだろうが、井上にはもはやそこまでの余裕がなかった。 「あ、や……聞多……っ」 絞るように木戸の体を抱き、無茶苦茶に責めたてた。 「ひ、……あぁ、あ、」 「あんた、なんでそんなにやらしいんだよ」 「聞多、聞多……、」 四肢をひきつらせた木戸の体を、数度の痙攣が襲った。彼がその慾を吐き出したのにあわせて、井上もまた、彼の淫らな肉の奥にたっぷりとそそぎ込んでいた。 「なん、で……」 木戸の手が、彼の顔の横にぴったりとつけていた井上の額をぐいと押しのける。体は木戸の上に乗っかったまま、井上は首だけをもちあげた。 「何です」 「なんで、萎えないんだ……」 あきれたという顔で見上げられる。紅く腫れた目もとに、情交の余韻が匂うようだった。 彼の体のうちでもっとも欲深な場所に、まだ、井上はいる。熱く息づくその中の感触はひどく心地よく、とても抜いてしまう気がしなかった。だからといってことさら踏ん張っているわけでもないが、遂情の後も、井上の硬さはかわらなかった。 「なんでかねえ」 ほら、と腰を動かしてやると、木戸が息をつめ、こちらを睨んだ。 「ばかに若いじゃないか」 「そうでもねえよ」 片頬で苦笑する。 「近頃はめっきり、そうでもねえのよ」 「だ、けど……、」 「そう。こんななんだよな。なんでかねえ」 言いながら木戸の中を擦ってやる。片脚を抱えあげ、本格的に再開することを暗に告げると、 「よせ、」 強すぎる感覚に彼の中が波打つようにふるえる。 「抱かれたかったんだろ」 「聞多、」 「俺だって、痩せる思いだったぜ」 「や、苦、し……っ」 「いいんだろ」 弱いところを狙って、木戸の体を好きなように苛む。彼ははじめこそ抗うようすをみせたが、二度三度そこを突いてやっただけでもう下肢からは力が抜け、逆に井上をもとめるように腰を揺らしはじめた。熱く熟れた肉が、嬉しげに井上を締めつける。 「あ、ぅん……っ」 「いいか……?」 「ん……、」 「なあ、」 「っ……、い、い……」 井上の髪に、彼の指がからむ。かき撫でられる感覚がこそばゆくて、彼の唇をとらえると、噛みつくように吸いあげた。 「ん、ふ……っ」 「なあ、」 耳朶をくすぐってやりながら、彼の唇の上で問いかけた。 「ここでいくのって、どんな感じだよ」 強く奥を穿ってやる。木戸の背が大きくしなった。 「なあ」 「あ……、ど、どんな、って……」 そういわれても、と、艶めかしいためらいが、上気した頬のうえにうかぶ。 「その、ときにもよるし、」 「うん、」 「相手によっても……」 「……あんたさぁ…………」 井上はがっくりとうなだれた。その下で、木戸は甘い吐息を洩らしながら、自分で腰を揺すってつづきをねだっている。 「聞、多……」 彼の瞳が、淫慾に蒸れたように潤んでいる。 「い、かせて、くれない……のか、」 こんなときばかり、ひどくさびしそうな顔をして。 「畜生、」 吐き棄てるようにちいさく叫ぶと、木戸の腰をきつくつかみ、荒々しく体をぶつける。彼のそこからは、最前井上が放ったものが溢れだし、また中でかきまぜられて、卑猥な音をたてていた。 「ん、あ、あ……」 やわらかな肉が井上にからみつき、さらに奥まで頬張ろうとするように蠕動する。 「聞多……ここ、」 「ああ?」 「ここ……」 と、木戸は腰を擦りよせながら、中で井上を締めつけた。 「なんだよ」 「ここが、も……溶けそ……」 なんだよ、ともう一度、今度は笑いながら言った。正直なところ、体の熱が増している。もう少し楽しむ気でいるのに、そんな言葉を聞かされつづけては予定がくるうではないか。 (どうしようかな) せっかくだから言うだけいわせてみないともったいない気もするが……。一瞬考える間に、木戸はさらに、 「体が、ぜんぶ、お前の……」 いやにくわしく(意味はよくわからないのだが)伝えようとする。 「どうしたんだよ」 髪を撫でてやると、 「いく、とき……。ここで、」 そう答えた。 (ああ) 「さっき訊いたことか」 ここで感じて気をやるのはどんな感じかと、井上が戯れに尋ねたことに、木戸は答えているつもりなのだろう。 「言わなきゃいかせてもらえないとでも思ったか?」 うん? と顔をのぞきこんでやったが、木戸はそれももうはっきりとはわからないらしく、井上にしがみついたまま、 「お前で、いっぱいで……中も、外も……」 涙まじりの声でうったえた。 「もう、溶け……頭……」 「もういいよ」 たまらなくなって、汗に濡れた首筋にむしゃぶりつく。木戸の中がさらに締まった。 「あ、も、壊れ……、」 「もう喋んなって」 井上自身もわけがわからなくなり、がむしゃらに木戸を揺さぶると、何かの罰ででもあるかのように、ひときわ深いところへきつく精を散らした。 体を拭ってやるあいだも、木戸はぐったりとソファに身を横たえて、うっすらと目をあけていた。そうして井上のあやつる手拭が皮膚のやわらかいところをたどるたび、かすかに体をふるわせた。 「大丈夫ですか」 「ああ……」 彼の唇が淡く微笑んでいることに安堵する。 あまり遅くならないうちに、と、さっきまで苛んだ部分に触れ、最後の処理をしようとすると、 「いいよ」 木戸の手がそれを払った。 「いや、だけど」 「まだ、もうすこし……」 このまま、と小さくつぶやいて、井上の手を握った。 「どうしたんです」 「どうした、といわれてもな」 苦笑した顔に、疲労の色があきらかだった。額にこぼれた後れ毛をかきあげてやると、彼はまぶしそうに井上の指先を目で追って、それから、 「よかった……」 そっと噛みしめるように言った。 「そう、ですか……」 井上は下を向いた。 最中の乱れている木戸もいいが、事後のこういう気怠げな、しどけない姿も男を煽る。井上はふたたびそこに血があつまってくるのを感じた。そしてたぶんそれは、表情に出ていたのだろう。木戸はふわりと笑うと、握っていた井上の手をひきよせて、頬にあてた。 「木戸さん」 「来るか……?」 もう一方の手を伸ばして井上の腕を待ち、立てた膝をひらいて誘う。井上は下腹にほとんど痛いような疼きをおぼえた。 「でも、あんた……」 苦いようなよろこばしいような変な顔をしていると、 「平気だ」 木戸の手が、するすると井上の腕を撫でる。 「ただ、俺はもう鈍くなっているから……。してもお前がいいかどうかは別だけどな」 「馬鹿を言いなさんなよ」 片眉をつりあげて舌打ちした。 「いいにきまってんだろ」 あんた、この体、自分で知らねえだろ。すげえぞ。そう言いながら、木戸の両脚のあいだに膝を入れた。 「そうか……」 「そうだよ。それはもう、すげえぞ」 なんだそれは、と言って木戸が笑う。その笑いごと閉じこめるように深く口を吸い、やわらかく彼の体を抱きしめた。ゆっくりと押し入った彼の中はやっぱり熱く狭く、すげえな、と井上はもう一度溜息を洩らした。 さすがに、井上にもさっきまでの勢いはない。ゆったりと木戸の体を揺すり、木戸もおだやかにそれにこたえた。そうしてごくゆるやかに、慣れた体を睦ませあった。 「もっと長く、あんたを抱いていられればいいのにな」 井上は、寝そべったままの木戸の横に腰掛けている。もう動くこともできないらしい彼の髪を撫でながら、上体をかたむけて口づけると、ソファの中の撥条がぎっと軋んだ。 「たとえば一日中、さ」 「死んでしまうだろ」 と、木戸が笑う。しかし井上にしてみれば、まんざら冗談でもなかった。 「なにもぶっ通しでってんじゃねえよ」 疲れたら、眠ってさ――。それはだいぶん前から思いえがいていたことだった。 「素肌のあんたを抱いたまま眠って、起きたらまた抱きあって……それで丸一日過ごしたら楽しいだろうな」 「食事はどうするんだ」 「握り飯でも置いとけばいいだろ」 「合戦準備みたいだな」 「実際合戦だぜ」 井上もつられて笑った。 「喰うか喰われるかの渡り合いだろ。あんたみたいな助平と寝るのなんざ」 「そんな物騒なことを一日中したいのか。関ヶ原でさえ半日だぞ」 「半日で取った天下だから三百年しかもたねえんだよ。俺とあんたなんかそこは」 「何年生きる気なんだお前は」 木戸は笑いながら、体の上にかかった襦袢の襟を引きあげた。寒いか、と訊いてやると、いや、と首を振る。その肩のあたりに手をやって、彼の体温をたしかめながら、 「女みたいなことをいうようですけどね」 井上はにがいものを舌でころがすように、頬をゆがめてつぶやいた。 「半年は長いぜ、実際」 木戸はかすかに微笑んだまま、自分の肩をさする井上の手を見ていた。長い睫毛が、白い頬に憂い深げな影を落としている。そうしてややしばらくだまっていたが、やがて、 「染井なら」 溜息のように口にした。 「え?」 「染井の家でいいなら、空けておこう」 そう言って、井上の手にそっと手をかさねた。 「え、それは、」 「今度はちゃんと来いよ」 見上げた木戸の瞳に、窓外の空が映りこんでいた。すでに夕刻をむかえた空には薄紅の大きな雲がうかび、それが風に乗ってゆっくりと流れている。 「行くよ」 と、彼の瞼に口づけた。 「だからあんたもちゃんと、帰って来なよ」 どこからどこへ、とはいわない。木戸も、何も訊かなかった。 彼の瞳の中で、雲が茜の光芒を引きつつ流れ去ろうとしている。たぶん、東から西へ。流れた雲は戻らないが、明日は美しい陽が昇るだろうか。 「握り飯、塩握りじゃあんまりだよなあ」 口づけの余韻を振り切るように、わざと間のぬけた声をあげた。 「俺は昆布がいいんだけど」 と言うと、 「本当に一日握り飯で済ませる気なのか」 木戸が笑う。 「仕出しでも取ればいいだろう」 「そんなに贅沢はいわねえよ」 腹が膨れると動きにくいし。にやりと唇の端をつりあげると、 「俺が動けばいいんだろう」 あっさりと言った木戸に、 「かなわないねえ」 すくめた肩の先に、柑橘類の冴えた香にも似た冬の空気が揺れた。 PR |

