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【2026/04/05 05:29 】 |
容堂・広沢×木戸
べつに3Pではないんですが……。
まあろくなネタではないです。いつものことです。

美しいから可愛くなくてもいい、という台詞は美●明宏のパクリです。
若い頃三島ホモ夫に言い寄られてすげなくかわし、
「君は可愛くないな」と言われた●輪様は
「ええ、きれいですから可愛くなくっていいんです」
と言い返したそうです。さすがです。

後藤の扱いがたいへんひどいですが、以前某様に
「後藤はただの豚なので後藤の前でおっぱじめても何の問題もない」
「サカってる横で普通に何か食ってそう」
との御教示を頂戴しましたので、ああいうことになっております。食ってはいないけど。

そういう色々どうしようもないよみものが「つづきを読む」以下の代物でございます。


『貪者の宴』
 耳もとに衣擦れの音を聞いた気がして、木戸は目をあけた。ありていに反省すれば、就寝前から予感はあった。期待といっていいかもしれない。
 「容堂様――」
 果たしてその顔が、にんまりと笑ってこちらを見おろしている。闇に馴れない木戸の目にはこまかな造作までは見えないのだが、獣のような眼の光がぎらりと欲望のかたちに歪む、そのなにか不穏な雰囲気は、間違いなく容堂のまとっているものだった。
 容堂の両脚は、すでに木戸の体を跨いでいる。そのまま袴の紐を引こうとする大きな手を、木戸はそっと抑えた。
 場所がわるい。
 鍛冶橋の土州邸の一室であるというのは、まあいい。木戸は過去にも何度かここへ呼ばれ、容堂に酒杯を賜り、そのまま抱かれた。だが今日は、同じ邸での面会でも、差向いではなかった。
 
 後藤に接待させるからちょっと出てこいと、容堂からのごく簡略な招待状を受けとったとき、木戸は他出しようとするところであった。広沢と先約がある。柳橋の料亭へ、広沢はすでに来て待っているはずである。広沢へ一筆ことわりおいてまず容堂のほうへ行くのが順序というものかもしれないが、ふと木戸は別のことを考えた。
 場所は柳橋とはいえ、広沢とは遊びに行くわけではない。いよいよ実行の迫った版籍奉還後の政体を見据えて、この夏朝官は公選制をもって登庸することにきまった。種々、混乱がある。それらに関して、あらためて廟議という形ではまだできかねる類の下相談を広沢としようというので、要は半ば御用のようなものである。朝廷の政務は、隠居大名との――いまは官途についているとはいえ、その勇退もおそらく近い――遊興よりも優先さるべきであろう。まして今度の版籍奉還にともなって、世襲知藩事は廃される予定である。もはやかれらは昔日の国持大名ではない。
 後藤が座に出るというのなら、容堂の近臣は今夜の招待のことをおおかた知っているのだろう。だから木戸はあえてそういう形で事の順逆を示したつもりであった。といって、容堂その人に対しては相変わらず畏敬にちかい好意をいだいている。
 (大いに御無礼ではあるが――)
 おそらく容堂は理解してくれるだろう。そう思って木戸は、広沢との会談を果たしてから向かう旨、返書して使者に持たせた。
 容堂は、やはり怒らなかった。
 が、意外なことを言ってきた。
 広沢と話している最中、使者がもう一度容堂の手翰を届けてきた。そのほとんど短冊みたようなみじかい手紙に曰う。
 ――ならば広沢も来い。
 木戸は苦笑した。
 「どうした」
 訝る広沢に、
 「さすがお大名はお育ちが違うよ。誘って蔑ろにされようとは露ほどもお疑いでないらしい」
 手紙を渡してやった。
 広沢は一応押しいただく真似をして、容堂の達者な蹟(て)をながめたあと、
 「ふうん」
とやはり苦笑した。
 「お互い、陪臣の前途は多難だな」
 なかなか、朝臣の――ひいては朝廷の権威というものは、まだ殆ういものだ。そういう意味を、おそらく彼は言外にこめたのだろう。しかし肩をすくめた表情が妙にあざやかで、
 (ああ、やはりこの男はかならず事を成す)
 眩しい思いがして、木戸はそっと眼をほそめた。
 
 広沢と連れ立って参上すると、容堂はすでに銚子を引きつけて上機嫌で、
 「おう、来た来た」
 来たぞ、と見ればわかることを傍らの後藤に言った。
 「はあ。おいでですな」
それから後藤がこちらにちょっと目礼したのは、自藩の大殿様のわがままを詫びたつもりだろう。彼は彼なりに、苦労しているにちがいない。
容堂は、はじめて酒席をともにする広沢がめずらしいのか、酒は飲めるほうか、親はまだあるか、兄弟は、といった市井人のような問いから、果ては天下のことまであれこれと質問責めにした。広沢はそのいずれにもそつなく答え、またあたえられる盃を小気味よく干して、大いに容堂をよろこばせた。
「長州者は面白いな」
膝を叩いて笑った。
「大膳大夫殿はずいぶん鷹揚なお人柄とお見受けするが、そのほうらはいかにも切れ者で抜け目がない。いや、褒めているのだ。緻密に理を立てておいて、やるときはいささか暴でもある。まあそれが、」
きろりと木戸と広沢を交互に見くらべ、盃のふちを舐めた。
「向後天下を切り回すに必要な才幹だろう。三百年飽食した大名なぞは、やはり太平の飾り物よ」
広沢がぎょっと目を見ひらいた顔を、あわてて伏せる。
「容堂様――」
木戸が声をかけると、
「ん、ああ、」
容堂は盃を置いた。
「これは口が滑ったな。なに、大膳大夫殿の悪口ではない。あの君はなかなか肚の太い大人だ」
「はあ」
敬親のことでないのはわかっている。容堂は時勢と自身の資質とをかわるがわる鑑みて、老練な漁師が潮をみるように、引き際をうかがっているのだろう。彼こそそういう点は緻密かつ怜悧であるが、また一方でありあまる才を自ら恃んでいるだけに、人しれずやりきれぬ思いはあるにちがいない。それがときどきこうして口の端に出る。出るどころか、ときに露骨にぶつけてくることがあるのだが、それはやはりこういう場では容堂もしたくないのだろう。ふいと話題を変えて、それきりそのことは言いまぎらしてしまった。
(今日は、ここまでかな)
木戸はほっとしたような、変にものさびしいような思いで容堂をながめた。容堂がなにかこの手のあやうげな物言いをしたとき、その夜彼はきまって木戸を抱いた。澱のように溜まった鬱懐を木戸の体のなかで解きはなつように、彼は激しく木戸を揺さぶり、木戸が翻弄されて乱れるさまを楽しんだ。慰みものにされているといわれればそうなのだが、誰よりも容堂の英才を慕っているつもりの木戸は、そんなふうに扱われることが嫌いではなかった。
だが、今日の席には後藤も広沢もいる。尋常の酒宴として終わるだろう。
容堂はしきりに飲み、しきりに勧め、満座大いに快酔した。
ふと話題が途切れ、庭の虫の音が高く聞こえたとき、
「さて」
と容堂が片膝を立てた。
「何やら眠くなったな」
すでに深更である。
「おぬしらは泊まってゆけ。儂も寝よう」
酒量のわりにひどくたしかな足取りで、上座から降りた。
「は、では」
奥にお床の用意を、と後藤が人を呼ぼうとするのを、いや、と制して、
「要らぬ。ここで寝よう」
「は?」
「市井の雑魚寝というやつをしてみたい。おぬしらは床を取るか? それでも良い」
「そ、そのような」
後藤があわてる。
「では雑魚寝の供をせよ」
言いざま羽織を脱ぎ捨て、袴を解いて、もうごろりと畳に体を伸べている。無茶苦茶である。
「あの、御両所……」
後藤は弁解するようにこちらを見た。こういう御気性ですから、とはさすがに当の容堂の前ではいわないが、情けないようなその表情が、どうかこらえて、と懇願していた。木戸は、広沢と目を見あわせて苦笑した。もとより拒めるはずもない。
「では、失礼して」
広い座敷に点々と横になった。滑稽な光景である。
後藤も、木戸も広沢も、軽格の生まれではない。しかし奢侈に馴染むような家でも当人の趣味でもなく、御一新前には相応に辛酸を舐めている。吉原にあるような嵩の高い羽布団よりも、畳にじかに転がってしまうほうが、かえって寝やすいぐらいであった。
後藤が、真っ先に寝入ったらしい。割れるような鼾がひびきわたって、
「象二郎うるさい」
鼾の方角に向けて、容堂が何かを投げつける気配がした。それがあたったのかどうか、ぐ、と鼻が鳴る音がして、後藤は少し静かになった。
(大物だな)
にやにやしているうちに、木戸も深酒が効いてきたのか、とろとろとまどろんだ。
 
あれから、どれほど経ったのか。
いま木戸は、自分に覆いかぶさり、膝を割ろうとする容堂の力に、無言で抵抗している。
木戸は、座敷の隅にいた。後藤は一間ほど向こうで大の字になって、大きな寝息をたてている。広沢は木戸の頭のほうで、やはり一間すこし離れて、背をまるくしている。そのかれらと同じ部屋で、容堂は事に及ぼうとしている。
「おとなしくしろ」
低い声で叱りつけられた。木戸は固く膝を閉じたまま、
「……なすがままに寝ているのは好かぬと仰せになりました」
いつぞやの睦言に容堂が言ったことをもちだしてさからった。
「お前は可愛くないな」
容堂が溜息をつく。
「もっとも、可愛くなくともよい。お前は美しい」
大きな掌が、襟から滑り込む。
肌を撫でる手は無造作におもえるのに、微妙な加減を心得ているのか、木戸の血がざわりと波立つ。
「お戯れがすぎましょう」
力が抜けた膝の間に、容堂の膝が割り込んでいる。流されてなるかと自分を叱ったが、
「戯れてはおらぬ。儂は大真面目でお前とまぐわいたいのだ」
体の奥にずくりとこたえるような声で囁かれて、おもわず息を詰めた。
最中にだけ聞かせる容堂のこの声に、木戸は弱かった。あくまで抗わねばならない、と固く喰い締めていた意志が、他愛もなくほつれてとけてゆく。甘いものが体の芯を駆けぬけ、空腹で砂糖を噛んだときに似た、うずくような痛みが深いところの肉を貫く。その衝撃を逃すようにゆるゆると溜息をつくと、なにか気怠い、濃い靄が体を支配して、木戸はけぶった視界のむこうに容堂を見うしなわぬように、そっと手を伸ばして彼の膝にふれた。
 
容堂の手前、一同は羽織袴のまま寝ていた。その麻の夏羽織を剥かれ、袴を奪われる。裾を割って入りこんでくる手の熱さに、木戸は唇を噛んで慄えた。
すでに期待で形を変えたそこを、ねっとりとした仕草で嬲られる。体のなかの熱が結露するように、そこから溢れるものがある。それを、容堂は指にすくいとって、これから蹂躙しようという部分へ塗りつけた。
節くれだった指が、入口を撫で、肉の襞を割ってすすんでくる。いつもならばそのあと執拗な愛撫が繰り返されるのだが、容堂は二、三度中を擦りあげると、すぐに指を抜いた。そうして木戸の両膝を、肩につくほど深く折り曲げた。
まだ、と思う間もなく、衝撃に木戸の体がひきつった。
狭い肉の間を、ひどく熱くて硬いものが突き破るようにして奥をめざす。
(痛い……)
木戸の顔が蒼ざめた。容堂に腰を捉えられ、逃げるわけにも、声をあげるわけにもいかず、木戸はその狼藉に耐えた。
が、裂けるかとおもわれたそこは、存外傷つきもせずに、容堂のいかついものを受けいれている。怪我をしないぎりぎりの妙所というものを、どうやら容堂は知っているらしい。
体が、はちきれてしまう気がした。容堂のものを一杯に埋め込まれ、肉体的な圧迫はもちろん、木戸の意識は、もはや繋がっているそこのことしか考えられない。内側からぎっちりと隙間なく犯されて、頭も体も弾けてしまいそうだった。
額に汗の玉をうかべながら、つとめてゆっくりと呼吸する。もう少し……、と頭の奥でくりかえした。この凄まじいほどの圧迫感がやがて充足感にかわり、快楽をあたえてくれることを、木戸は経験で知っている。どうも自分の体というものはそうできているようだったし、さらにそれ以上にたしかなことがある。
容堂は、巧みだった。
こうして一見酷くされることもあるが、最後には木戸の官能を追いあげ、深い歓楽の淵に拉してくれた。木戸は毎度その底知れぬ暗い裂け目をこわごわ覗き、しかしいつしかたまらなくなって自ら身を躍らせ、悦びの汗にまみれながらその淵で溺れた。
(だから、今日も――)
その予感と期待が、木戸を苦痛に耐えしめ、熱を煽る。容堂に貫かれていることそのものが、次第に悦びにかわってゆく。
「は……っ、」
吐息が淫らな湿り気を帯びはじめる。闇のなかで容堂が笑い、その手が木戸の素肌を好き勝手にまさぐる。声も立てられない状況のなかで、木戸はその感覚のたまらなさを、繋がった部分でしか訴えようがなかった。
しっとりと潤ったそこは、容堂を深く呑み込んだまま蛇のようにうねり、締めつけた。盈たされた感じが、目の前が暗くなるほどに濃さを増す。
「松菊、」
木戸の感覚が高まろうとする瞬間を、いつも容堂は見逃さなかった。耳朶を喰まれ、かすれた声を灑ぎこまれる。びくりと体が跳ねた、その動きにあわせて腰を使われ、弱い一点を突かれた。
「…………っ!」
あやうく叫びそうになるのを、手を噛んでこらえた。容堂は愉しげに目をほそめると、木戸の腰の下に手をやり、引きつけて、自分の太腿の上に、半ば乗り上げさせるようにした。その角度が木戸にこたえられないのを、彼は初めての媾合のときに探りあてていた。
こうされると、容堂の異形のそれはより深く木戸を貫き、弱いところが抉るように擦りあげられる。脳髄が白く飛び散りそうな烈しい快楽が身を灼き、体のなかで、容堂に犯されているそこだけが、生きて呼吸している気がした。あとの部分は肉も骨も、砕け、あるいは溶けてなくなったかのようである。
木戸は肩をふるわせてむせび泣きながら、ひたすら手を噛んで声を忍んだ。巧みに緩急をつけて揺すりあげられて、何度も
(もう、死ぬ……)
と思った。こんな場所でこんなふうに男に犯されて、それで死ねばこれほどの恥辱はないのに、しかしその辱めはあまりに甘美で、じっとしてそれを味わうことに耐えきれず、
(死ぬ……)
好物をくりかえし愛でるように、何度も胸のうちに反芻して、木戸は自ら腰を振った。
 
「動くな」
と容堂が言ったのはそのときだった。
ぴしりと人を圧するその語調に、
(え……?)
木戸は最後の快楽を遮るように固くとじていた目をわずかにあけた。が、容堂は木戸を見ていない。彼は顎を上げて、闇のなかを睨みすえている。
(一体何を、)
と、その視線を追って首をめぐらした木戸は、瞬間、あたりの闇に内臓をじかに鷲掴みされたような気がした。
見ひらいた眼に、容赦なくその光景は映りこんでくる。
(兵助――――)
広沢が。
(いつから――――)
心臓が胸郭を撲りつけるように大きく脈打ち、自分の体のその反応についていけずに、木戸はひゅっと喉を鳴らした。全身をこわばらせた拍子に容堂の質量がさらにずしりと腹の奥にこたえ、苦痛とも快感ともつかないその感覚に、唇をわななかせる。
顔を仰け反らせて向けた視線の先では、広沢が浮かしかけた腰を見えない腕に引き据えられるようにして、のっしりと端座しつつあった。
「もそっと」
と、容堂がなおも彼に命ずる。
「こちらへまわれ」
容堂と木戸が睦みあっている、その横へ来いという。
「広沢」
しずかな、しかし鋭い声だった。
広沢の表情は動かなかった。彼はべつにいやな顔もせず、かといって笑うでもなく、謹直に目礼して、いわれたとおりに容堂と木戸が折りかさなっている横へ、五、六尺離れて座った。
「容堂様、」
悲痛な声をあげた木戸を叱りつけるように、容堂が腰を打ち込む。
「…………っ」
「松菊よ」
耳に湿った吐息がかかる。耳孔の中から犯すように、容堂が低い声で囁いた。
――広沢とも、寝たのか。と。
木戸は黙って唇を噛んだ。胸は愕きに冷えたままなのに、体がひどく熱い。容堂が満足げにほくそ笑んだ。
「動いてはならぬぞ」
と、もう一度広沢に言う。
「……は」
「良いものを見せてやる。眼を閉じるなよ」
松菊おまえもだ、と首筋に舌を這わせた。
「や……、」
「さあ、愉しいぞ」
滴るような淫蕩さで、容堂が笑う。木戸の胸が恐怖に凍え、しかしそれは寒国で作るという氷の灯籠のように、その芯にあかあかとした情火をみだらに燃やしているのだった。
 
後藤の鼾が、場違いに響いている。
「象二郎めはまったく仕方がない」
もっともあいつに見せたところでさほどに面白くはなかろう、このまま朝まで寝ておればよいわ、と容堂は鼻を鳴らして笑った。
「さ、どうだ」
木戸の片脚をもちあげて肩に掛ける。中の角度が変わった。
「や、あぁ……っ」
(兵助……)
見ないでくれ、と言いたいが、とても言葉にならない。容堂が、いつもより昂ぶっている。その慾に苛まれて、木戸は喉奥から熔けていくように啼いた。
広沢は、いつから起きていたのだろう。
自分たちの痴態に気がついた彼は、そっと出て行こうとしたのだろう。そこを容堂に見つかり、呼びとめられた。
一言も抗わずにしたがった広沢は、いま身じろぎもせずに、容堂と木戸の媾合を見つめている。その、彼そのもののようにずしりと落ち着いた視線を全身に感じる。容堂と広沢と、二人がかりで犯されているようだった。一方は烈しく、一方はごく静かに――――。
(兵助……)
容堂に突き上げられ、熱で靄がかかったような視界のむこうに、広沢の姿が揺れている。
(せめて、何か……)
言ってくれればいいのに、と思いながら、木戸はだらしなく嬌声をあげ、涙を零した。
 
今夜容堂に招かれなければ、料亭での用談のあと、自分は広沢と抱きあって眠っていただろう。露骨にそうといって誘ったわけではないが、広沢にも多少、その心づもりはあったにちがいない。みじかいやりとりのあいだに、なんとなく通う、淡い空気のようなものがあった。
広沢はその無骨な容貌と仕事の隙のなさに似ず、房事となればひどく優しい。
彼は床のなかではいつもあまりものをいわなかった。
そのかわり、ひとよりも大きな眼が、じっと木戸を見おろしている。そうして巨細に反応を読みとり、木戸のより悦ぶ角度、より好きな箇所を探ってゆく。不意に弱いところを当てられて、思わず木戸が体をふるわせたとき、広沢はいかにもそれが木戸のためによかったというように、目だけでゆるやかに微笑む。その表情に体の奥がたまらず疼いた。
木戸が身をよじり、あられもない声をあげても、広沢は調戯いもしない。いいか、とも訊かない。ただ、木戸の手をとり、指を絡めて、慈しむように柔肉を慰める。手酷く犯されるのは割合に平気だが、広沢のするような抱かれ方に慣れない木戸は、感覚のやり場がわからず、からめられた指をほどいて、腕で顔を覆った。
「兵助、いやだ」
「痛いか」
(ああ、その声も――)
愛されている粘膜がひとりでに広沢を締めつける。木戸は顔を隠したままかぶりを振った。
「なんだか、いやなんだ……」
ひたすら優しい営みが息苦しいほど甘く、その甘さのぶんだけ変に木戸を悲しくさせた。
広沢の手が伸びて、腕をつかむ。ふ、と笑いの色の息が洩れて、その唇が木戸の唇に深くかさねられる。温かい。それだけで、達した。
その、広沢に。
彼とのときとはちがう嬌態を晒して、木戸は容堂に抱かれている。
こんなときでもやっぱり広沢は何もいわず、しかしその視線は、抱きあっているときとは微妙にちがっていた。
食い入るように、しかし自らつとめて醒めてしまおうとするような――……。責めているのではない、それでもどこか瞋りに似たものが混じった眼から、木戸はなぜか目をそらせなかった。
「松菊」
容堂が淫慾にかすれた声で呼ぶ。
「言うてみよ。どうしてほしい」
「あ……」
広沢のほうへ顔をむけたまま、木戸は横目で容堂を見た。彼の額にも汗がふき出し、瞳が情欲にけぶっている。その、悦楽の追いかたが、いつもより早い。
「言え」
と容堂はなおも促した。
広沢ならば訊かないことを、彼の前で容堂に要求されている。木戸の官能が、熟れきった果実のように爛れてゆく。
容堂の肩にしがみつき、背をしならせて腰の位置をずらした。
「ここ……」
容堂の先端が、木戸のいちばん好きな場所を抉る。甘い、光が弾けるような痺れが体を貫く。
「ここに、もっと……」
「ほう?」
「頂戴しとうございます」
「なるほど。こうか?」
「あ、……もっ……」
「こうか?」
「あぁ……」
いい、と、木戸は陶然と洩らした。熱に潤みきった視界に、広沢がいる。彼の視線が欲しかった。淫らに犯されている自分をもっと見せたくてたまらない。広沢の優しさが好きだといいながら、こんなふうに激しく踏みしだかれることにもひどく感じる自分を――。
容堂の昂ぶりが、木戸のその場所を執拗に突きあげる。下肢ががくがくと顫えた。
この場所を、広沢も知っている。
初めて肌をかさねた日、木戸のなかのつくりをたしかめるようにゆっくりと動いていた彼は、突如びくりと体を跳ねさせて反応した木戸に、いくぶんおどろいたようだった。彼は無言で木戸の頬を撫で、その表情が苦痛を訴えるものでないことをみとめると、ありったけの情愛をそこへ押し詰めるように、重くゆるやかに腰を使った。耐えきれずに泣きだした目尻に唇が寄せられ、涙を吸う感覚の切なさに、木戸は子供のように肩をふるわせた。
そこの責めかたひとつとっても、容堂は広沢とはまるでちがう。
いかにも殿様然とした放埒さで、壊れるのではないかと思うほど、木戸をかき乱す。そのくせ本当に傷つくようなことはしないのは、彼の「賢君」らしい分別なのか、それとも色の道の熟達を示しているだけのことなのか、どうか。
受け容れている木戸のそこから、濡れた音と、肉のせめぎあう音がする。広沢にも聞こえているだろう。目の眩むような快感のなかで、
「容堂様、」
ねだるように啼くと、
「あの男も」
容堂は木戸にだけ聞こえるように囁いた。
「あの男の名も呼んでやれ」
はっと容堂を見返すのと同時に、それまで下におろされていたもう一方の脚も彼の肩に抱え上げられ、繋がりが上からの角度に変わる。体重をかけて押し込まれて、体がばらばらになりそうなほどの強い感覚が脊髄を走る。
「……っあ、」
「呼べ」
「あ、……兵助……、」
濡れた声で広沢の名を呼んだ。彼が一瞬びくりと身をふるわせたのがわかる。
「兵助、兵助……」
容堂が大きく腰を使う。彼が出入りしているのが、広沢からも見えるだろう。気持がいい、どうにもならないほどいいのだと、木戸は絶叫したい衝動にかられた。だがもはや長い言葉を紡げるほどの息が続かず、だからやむなくひたすら名前を呼んだ。
「兵助、」
もっと、見てほしい。その視線で犯してほしい。
(――あさましい)
広沢はどれほどあきれているだろうか。
が、そう思うことすら木戸の感興を誘った。容堂と交わりながら広沢との媾合を思い出し、広沢に抱かれる夢のなかを漂いながら、容堂に犯される。激しく、異様な快楽に脳髄が――自身を保っている意識が、砕けて霧散してゆくようだった。
「お前の体は、」
息を切らせ、木戸の肌に汗を滴らせながら、容堂が呻く。
「本当に仕様がないな」
締まって、絡みつきおって、たまらぬ。そう言いながら精確に木戸の弱点を擦りあげ、奥を責めたてられる。
「いっ……、あ、あぁ……っ」
自分から腰を押しつけ、身をよじらせて容堂に応える。
「あ、もぅ……っ」
「きつい、松菊」
容堂は鼻を鳴らしながら、しかし満足そうに笑った。
「せっかくだ。もっと何か言え」
その低くずしりと重い声に、木戸はいつもさからえない。
「あ……容堂様……が、」
「儂が?」
「いっぱいに……中、苦し……、」
「つらいか?」
「いい……も、死にそう、で……」
「死んではこまるな」
容堂がひときわ大きく腰を打ちつけた。
「ひぁ……っ!」
「死んではもう、こんなこともできぬ」
「あ、あ、」
「お前とは、もっとこうしてやらねばな。お前も体がおさまるまい」
「で、ですが……ですが、っあぁ、」
ああ、もう本当に死ぬ。木戸は白くなる視界の底でそう思った。互いの肉が崩れてひとつになるかと思うほどにぐっと捻じこまれ、
「ああぁ……あ、」
容堂の熱い迸りを奥に感じる。
(兵助……)
いま果てるのだと彼に知らせたくて、手をそちらへ伸ばしたかったが、あまりの快感に容堂にしがみついた腕を離すことができず、木戸はただ顔だけを広沢のほうへむけて、涙でぐずぐずになった視界におぼろげに彼の姿をみとめながら、四肢を激しくふるわせて達した。
 
そこから溢れ出た容堂の精が、むきだしの下肢と、中途半端にまとわりついた衣服を汚している。腹や胸も、自身の放ったもので濡れていた。
容堂は自分だけ簡単に身づくろいすると、別室で寝ると言っていなくなった。木戸は脱力しきった体を放り出されたまま、容堂が去った方向をぼんやりと眺めていた。が、ふと広沢の動く気配を感じて、途端にその意識は正気にもどった。
――なんと馬鹿げたことをしたものか。
情痴に溺れるまま、広沢の目の前で容堂とまぐわった。何度も広沢の名を呼び、もっと見てほしいと――露骨に言いはしなかったが――ねだった。とても一個の男子の――まともな人間のすることではない。木戸は愧ずかしいというよりも、いっそ恐ろしさに顔色をうしなった。
衣擦れの音で、広沢が立ち上がるのを感じた。その瞬間、木戸は反射的に着物の前をかきあわせると、あとも見ずに座敷から逃げだしていた。
縁廊下に出ると、案外に夜気が涼しかった。昼の熱の凪ぎきったようなしずけさが心地よく、いっそ裸足で庭に出てしまおうと思った。が、容堂の圧迫感がまだ体の奥に残っていて、その疼きに木戸の足はもつれた。
(あ……)
よろめいた拍子に、とろりと生温かいものが溢れだす。木戸はおもわず膝を折った。容堂の残滓が、ゆっくりと内股を伝うのがわかる。交情の痴愚と、しかしそれがしだいに自分の体から遠のいてゆく寂しさに、木戸は熱い溜息とともに項垂れた。
と、不意にその肩を後ろからつかまれる。
「大丈夫か」
ああ、と哀しみと安堵のないまざった不思議な溜息が洩れる。
座敷からいくらも離れられなかった木戸は、あっさりと広沢の腕に捉えられた。
「立てるか」
と尋ねる声は、さっきまでの痴態など見なかったかのようで、しかし、木戸を気遣う真率さのなかに一点、常の彼とはちがう微妙なゆらぎを感じた。
彼の目を見るのが苦しい。
木戸が顔を背けようとするのを広沢はゆるさず、腕を引いて肩に廻させ、支えながら立ち上がった。
「離……、」
「井戸は、裏か」
しずかに訊いているだけなのに、木戸は全身を固く押さえ込まれたように、その問いから逃れることができなかった。黙って頷くと、広沢は半ば木戸をかつぐようにして歩きだした。
 
さっきまで容堂に抱かれていた体を、広沢に検められる。彼の無骨な指先に、木戸はここしばらく触れていなかったのに、その温もりに接すると、彼の閨での仕草をあまさず思い出すことができた。
井戸を覆う屋根の柱に手を突かされて、木戸は広沢に体を拭われている。濡れ手拭が肌を擦るたびに、ここに情交の痕があるといわれているようで、いいしれぬ羞恥に唇を噛んだ。
「お前にもいろいろあるんだとは思っていたがな」
はだけた木戸の肩に顎を載せて、広沢が呻くように言った。
「まさか容堂公ととは知らなんだ」
彼の手は木戸の内股を拭っている。木戸がなにも答えずにいると、
「しかしまああの仁も、聞きしにまさる放蕩ぶりだ」
 ずいぶん、と広沢はいいかけて口をつぐんだ。そのことがいっそう木戸の羞恥を煽る。体がふたたび火照りはじめているのが、広沢にはわかるだろうか。
 「お前も……」
 大きな掌が、足の付け根をまさぐる。
 「あんなふうなのか、いつも」
 あの隠居大名に、好きにされて。
 「……や、」
 木戸は首を振りながら、無意識に脚をわずかにひらいた。
 「俺はな、」
 とつぶやく広沢の声が苦しげで、そして同時に最前容堂に弄ばれつくした場所に触れられて、木戸の肌が粟立った。
 「容堂公のお誘いがなければ、今日は一晩中、お前を抱くつもりでいた」
 彼の指が、中へ入ってくる。
 「死にそう……か」
 容堂に組み敷かれながら夢中で発した言葉を、さめた口調で反芻されて、木戸はおもわず固く目を閉じた。
 「容堂公もさぞかしよかったんだろう」
 こんなになっている、と言いながら、広沢が中で指を動かした。木戸はとっさに声を呑み、柱に爪を立てる。広沢の指が通ったあとから、容堂の情慾のあとが、とろりと溢れて流れる。木戸が顫えるのもかまわず、広沢はその作業をくりかえし、中に残ったものをかき出した。
 体が、苦しかった。
 (もう、どうでもいい……)
 どうせあれだけのことをしたのだ。いっそとことんまで辱めてほしい。木戸の体の奥に、ふたたび闇い火が灯った。
 広沢はたしかに情交の後始末をしてくれたのではあった。しかしその手つきは木戸の感応を心得たもので、その何ともいえない焦れったさに、木戸は腰をくねらせた。肩越しに広沢をふりかえると、荒い息をしながら目顔で懇願した。
 「兵助……」
 広沢の顔が、にがくゆがむ。
 「あんなものを見せられたあとだ、優しくはできんぞ」
 
 酷くされてもいいと思った。
 しかし広沢はこんなときでもやはり、やさしかった。さんざん慰まれたあとの体をゆっくりと慈しまれて、木戸の快感は急速に高まった。
 「あ、あ、兵助、もう……」
 限界が近いことを訴える。と、
 「我慢しろ」
 そのとき初めて広沢は、媾合中の木戸に命令した。その声のおもわぬ重量感に木戸はあっさりと弾けた。そうして恍惚のなかでなおも息をはずませて、
 「朝まで、しようか……」
 ここなら誰も来ないだろう。譫言のようにそう言ってねだった。
 容堂とはちがう、広沢にあたえられる快楽を知っている体は、すでに抑えがきかないところまできていた。いまさら、蔑まれることなどかまってはいられない。この体でこそ自分は風雲を乗り切ってきたのだと、場違いに見栄がましいことを思った。
 (もう、遅い)
 何もかも。吐いて蹴りつけるように木戸はそう思っている。羞じらうことも悲しむことも、どうせとうに棄てた身ではなかったか。
 その自分になぜか優しい広沢の、その優しさを、木戸はひそかに試したい気分になっている。容堂が自分の寛容と好色を試したように、木戸もまた、そういうかたちで広沢に甘ったれてみたい気持がある。
 そう、それだからこそ、されるがままに彼の目の前で容堂に犯されたのだったろう。そうしてまだその傷口を彼に押しつけ、ざっくりと醜く裂けた皮膚を見せつけたいような、自分ながらどうも悪趣味な衝動を、木戸はもちあつかいかねている。
 (撥ねつけられれば――)
 捨てられれば、それまでだと思った。
 「お前は」
 と広沢が唸る。大きな手で腰が抱えなおされた。
 首をひねって彼をふりむくと、あきれたようなむずがゆいような、ひどく難しい顔で溜息をつくのが見えた。その顔が変に可憐におもえて、うしろめたさを感じるより先に、木戸は蕩けるように微笑(わら)った。

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【2012/09/06 21:07 】 | よみもの
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